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マるでダめなオさむちゃん

 ケース1

 研究所の窓から、そろそろと出て行こうとする怪しい空き巣・・・、ではなくオサム。

 「(ぐふふ、、今日は待ちに待ったポケモンレース・炎馬祭や!!一発当てたんで〜)」

 こっそり、と。
 最近、監視の目が厳しくなったしっかり者の娘の目を盗んで、いざ行かん!!
 と、意気込む背後に天井から忍び寄る影。

 『チュラー』
 「げ」
 『チューラー!!』
 「待てチュララ!!オサムちゃん人間やからなっ!!“エレキネット”やのうてせめて“いとをはく”でぇえええええぇぇぇ!!」

 問答無用!
 チュララことデンチュラの声が聞こえてきそうだった。
 まぁ、“エレキネット”も相手の素早さを下げる技だから、チョイスは間違えていない。
 全身ぐるぐる巻きのマヒ状態にされ、オサムは涙ながらにお馬さんに貢ぐのを断念するのだった。

 ケース2

 「ぷはー!!泡の出る麦茶はホンマうまいなぁ」
 「オサムちゃん、あんまり飲みすぎちゃだめだよ。明日学会でしょ?」
 「だぁいじょぉぶやって!!真朱はなー、子供やからわからんやろーけどお酒は心の栄養になるんやでぇー」
 「…でも、一升以上はダメだよ」
 「けちけちしぃなやぁ、夜は長いんやでぇ」

 聞く耳を持たない酔っ払いには、何を言っても無駄だろう。
 説得を諦めて、どうせ酔って眠ってしまうだろうオサムのために真朱は毛布を取りに向かう。
 入れ違いにニドクインのニドドと、トドゼルガのゼルルが現れる。

 『あらあらぁ、オサムちゃんったらぁ。真朱ちゃんを困らせたらダメじゃないのぉ』
 「ごぅふ!!」
 『ニドド姉さん、手加減って知ってます?』
 『ゼルルくんったら嫌ぁねぇ。毒状態になってもいいように、ちゃぁんとモモンの果実酒を飲んでるの確認したわよぉ』
 『そういうことじゃなくてですね』
 『ナナシの実だったら、ゼルルくんに頼んだわよぉ?』
 『実力行使からはなれましょう』

 二日酔い防止の前に、オサムの体力が赤ゲージである。

 ケース3

 『真朱、オサムが書斎に篭ってもう5日ね』
 「リゼル…、どうしよう」
 真朱とリザードンのリゼルの前には、手付かずのサンドイッチが置いてある。
 これは昨日の夜食分で、ちなみに今は昼だ。パンが乾ききってパサパサになっている。
 昨日の朝ご飯は食べていたが、おそらくそれ以降は何も口にしていないのだろう。
 オサムはだらしないときは本当にだらしないし、ダメ男だし、ろくでなしで服のセンスもからっきしでいい所なんてせいぜい顔くらいしかないのに無精ひげ生やし放題でやぼったい。まるでダメな男の、テンプレ通りの更に上である。
 だが、仕事中となると一切娯楽にも酒にも手を出さない。むしろ寝食を最低限…下手したらそれ以下まで削って仕事にのめりこむのだ。
 仕事のオンオフが極端過ぎるのだ、オサムは。

 『流石に夜からなにも口にしていないとなると、心配ね』
 「うん…。それにちゃんと寝てるのかな?」
 『どうかしら?死んだように眠っているなら構わないのだけど・・・』
 「オサムちゃん、入るよ?」

 本の山に囲まれて黙々と仕事をしているのか、書類に埋もれて屍となっているのか。
 できれば前者であれ、と願いながらドアを開ける。 『ばぁーあ』

 前に、ドアをすり抜けてミカルゲのミカゲが現れた。

 「ふぇえ!!ミカゲェ!!」
 『オサム、ネカセタ。真朱、ホッとスル?』
 『過激ね貴方。“さいみんじゅつ”?』
 『ユメもゴチソウ様シタ』
 「ふええぇぇ!!ミカゲ何してるの!」
 
 ミカゲによって強制睡眠させられた挙句、夢という名のHPまで食べられ昏睡状態のオサムを見つけ、慌てて救急車を呼ぶのだった。

 真朱は、自分の娘だと名乗らせるのが申し訳ないくらい、いい子だ。
 料理、掃除、洗濯は人並み以上にこなすし、ポケモンとも仲がよく、かわいらしい。なにより優しい。
 今だって、自己管理ができていない自分がそもそもの原因であるのに、自分が悪かったのだと深く頭を下げている。
 確かに真朱のポケモンのやることは容赦がないし、実際三途リバーが見えかけた。それでも、彼らは自分たちの主を思いやって行動してるのだ。非があるのは己であると一応自覚はしているから、彼らを咎めることはできない。心配してくれる真朱なら、なおさらだ。

 「本当にごめんね」
 「気にせんでえぇって。ほら、そんなショゲた顔しなや」

 うつむく顔を上げさせるように、頬をなでる。
 撫でると、いつも嬉しそうに目を細めるのは引き取った頃から変わらんなぁ・・・。

 「こっちこそスマンなぁ。サンドイッチ食べそこねたわ」
 「また作るからね。今は、雑炊だけど」
 「真朱の作るおじやはうまいからなぁ・・・、えぇ嫁になるわ。お前」

 真朱がお嫁に行くときは絶対に泣くな。とりあえず、婿は一発殴る。
 あつあつで出汁が効いた雑炊にレンゲをさすと、真朱はきょとんと目を丸くした。

 「お嫁さん?無理だよ。だって・・・」

 満面の笑みで

 「オサムちゃん、僕がいなかったら何もできないでしょう?」

 駄目親父の急所に、トドメの一撃が叩き込まれた。

 「真朱が好きな人作らん、と言うか作れんのはオサムちゃんが手のかかる男だからじゃなかと?」

 昔、千歳が何気なく言った一言がリフレインする。
 病床のオサムの枕が涙で濡れたのは、いうまでもない。
 後日、備蓄しておいたお酒を近所に配りまわるオサムを回覧板を回しに出たメタグロスのバレルが目撃することになる。

 ・・・・・・・・

 ろーる様

 リクエストありがとうございます。

 真朱の悪気のない一言、効果は抜群だ!!オサムの急所に当たった!!
 今回、真朱のポケモンたちを喋らせてみました。チュララ以外。
 なんだかんだ言ったりド突いたりするより、娘に一言事実を告げられるほうが刺さりますね。
 うちのオサムちゃんは根が駄目男なので一週間後には元に戻ってるかもしれませんが。少しは反省なさいな。
 シテンホウジのポケモンたちが書けて楽しかったです。トドゼルガ以外、♀か性別不明なパーティです。女は強し。
 改めて御礼申し上げます。これからも当サイトと管理人をよろしくお願いします。


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bkm