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- ナノ -

作詞作曲??
 
 ”はー、ホンマかったる。”

 財前はパイプ椅子にどっかり背中を預けてため息をついた。
 目の前のステージでは、四天宝寺の代名詞とも言われるお笑い研究部が漫才を披露していた。

 ”そもそも運動部と文化部兼部ってなんやねん。意味わからん。”

 財前も大阪人。お笑いは嫌いではない。だが、あくまで好きなのは見ることがであって、自分がやるとなると話は別だ。

 ”運動部…は団体競技じゃなかったらなんでもえぇとして、問題は文化部やな。演劇部も俺には向いてへんし、字を書くのがかったるいから新聞部もない。まだアップリケ部とか諜報部とかのわけわからん部活のほうがマシや。”

 配布された各部活の紹介文が載っている小冊子を見ながら、淡々と候補を絞り込んでいく。

 ”有力候補は軽音部やけど…。得意楽器のシンセはえぇとして、愛用しとるボーカロイドがなぁ…。たまにガチなバンドやと、これでもかっちゅうほどボカロをディスりおるヤツがおって反りあわんし結構面倒くさい。”

 己の趣味は作曲だ。これでも科学の限界を超えてやってきた葱娘な嫁と共に、某わらわら動画では名の知れたPとして数々の名曲を生み出してきた。
 しかしながら、悲しいかな。最近ではいわゆるオタク以外にも浸透してきた我が嫁は、それでもなおオタクっぽい、子供っぽいと後ろ指差される肩身の狭い思いをしているのだ。

 ”同じ音楽やのに、何で生の声はよぉて合成音はあかんねん。” 

 音楽に国境はないとか言ったやつ表出ろ。全世界のボカロ愛好家を背負って、パンピーの前で拡声器使って同じこといってみろや。
 あと嫁を馬鹿にしたやつは漏れなく呟き炎上させてやるから覚悟しろ。嫁の技術は声の出なくなった人々の代理声を出す医療器具に使われてんだぞ。運動ニューロン疾患の患者さんの救いの手として働いている嫁の技術に謝れ、懺悔しろ。
 あ、言っとくけど俺はオタクとかぷーくすくすとか言われても気にしないんで。むしろオタ生活万歳、二次元は俺の嫁なんで、そこんとこヨロシク。
 と、思考を脱線させつつ、財前は目星をつけた。

 "無難に映画部やな。"

 映画見るだけらしいし。楽そうだ。
 おそらく、説明もそんなに時間を要さずに終わることだろう。
 少しくらいまじめに聞いておこうと視線を上げる。

 「次は映画鑑賞部です。どうぞ」

 金髪の派手なセンパイのアナウンスとともに、ステージの照明が消える。
 スクリーンでも使うのだろうか?暗いと眠くなるのだが、映画部らしい演出だ。
 思ったとおり、スクリーンが下りてくる。講堂内の照明まで消え、周囲がざわめき始めたときだった。

 「光の力を秘めし鍵よ」

 凛とした、それでいて月の光のようにやわらかい声が響いた。

 「真の姿を我の前に示せ」

 真っ白なスクリーンに、桜の妖精が現れた。
 まわりに咲き乱れる桜の花と同じ色の服を纏った少女の足元が、光っている。なにかの魔法陣だ。

 「封印解除(レリーズ)!!」

 少女が叫ぶと、カメラが正面に回りこんだ。かわいらしい顔の女の子だ。彼女の手の中から光が生まれ、次の瞬間には青と銀のシンプルな槍が握られていた。
 …微妙に、衣装と少女の可憐さにミスマッチな気がしなくもないが、財前は気にしなかった。
 むしろ武器がミスマッチだからこそ愛らしさが際立ち、庇護欲が掻き立てられると言うか、こう…萌えなのだ。

 「汝のあるべき姿に戻れ!!クロウカード!」

 決め台詞なのだろう。
 振りかざした槍の先に光が集まっていき、長方形のカードへと変わっていき―――。
 映像が突然切れ、講堂が完全に真っ暗になった。   
 ざわめく講堂、一瞬の後。
 煙と破裂音、そしてステージにスポットライトが当てられた。
 煙の中から青い影が飛び出す。
 黒と青を基調にしたシンプルながら気品のあるガーブを纏い、身の丈近い槍を携えた少女は、まさに今までスクリーンの中で新入生を虜にしていた彼女だった。

 「次回は、みんなも一緒に封印解除!!です!!」

 背中のリボンを揺らし、軽やかにターンした少女がパッチリと綺麗なウィンクをする。
 スクリーンには丸みのある少女マンガ的な字体で、『カードキャプター四天宝寺』とタイトルが写しだされていた。最後には『部員大歓迎、特に音響スタッフ、衣装アシスタント募集中!!』と付け足されている。
 ガタッ
 興奮のあまり、思わず財前は立ち上がっていた。幸いなことに、財前と同じように立ち上がった生徒は何人かいたおかげで目立つことはなかったが、この一件で入学早々オタクばれした生徒たちが徒党を組んだことを蛇足ながら記しておく。
 スタンディングオベーション。
 照れくさそうな、はにかみ笑顔でぺこり、と一礼した少女には講堂が割れんばかりの大きな拍手が贈られた。
 財前は思った。

 リアル女子にも、嫁、ktkr。と。

 「真朱先輩」
 「ひ、ひかるくん…、そろそろ僕、ブリッジしそう…」
 「先輩、身体柔らかいんすね」
 「あ、ありがとう。でも、だからって、つらくないわけじゃ、ないんだよ?」
 「先輩が大人しく俺の作った歌、歌うてくれたら詰め寄るのやめたげますわ」
 「ふぇぇぇぇぇぇ」

 後日、映画部に入部した財前は小春に気に入られ、音響監督を背任した。
 そして、己が作った歌を歌わせようと、真朱が腰だけブリッジをするまで詰め寄る財前の姿が見られたとか何とか。
 更にその歌は『カードキャプター四天宝寺』のOPになったばかりか、ネットでも瞬く間に再生数を伸ばし一日でミリオン記録を塗り替え伝説となったらしい。

 財前光こと、ごりんPは、今日もクールな顔でハッスルしながら嫁たちのために作曲に励んでいると言う。

・・・・・・・・・・・・

 ななし様。

 リクエストありがとうございました。
 こ、こんな感じでよかったでしょうか?財前あるいは立海、特に幸村との絡みとあったので、身近な後輩の財前くんにしました。幸村と絡ませたかったならすみません。今のところ、あるカードを封印するまで全然関わる予定がなくて、書けませんでした。こちらの力不足です。
 それから勝手に財前をP、しかもオタク扱いにしてごめんなさい。ななし様ならびに財前ファンの方々、懺悔します。うちの財前はこんな感じの子です。真顔で萌えるクールドライ系オタクです。内心あらぶりながら、真朱と接してます。

 ちなみに、真朱のステージ衣装のイメージはマイソロ3のアリアガーブです。あれ、かっこかわいいですよね。ディセ真朱に似合っていたので採用してしまいました。
 こんな駄作ですが、感謝の気持ちだけはこめました。これからも当サイトをよろしくお願いします。


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bkm