訓練は想像を絶するものだった。エレンとミカサ、そしてあの悪夢のような日に二人に紹介され出会ったアルミン、それに私も合わせて四人は訓練兵に志願していた。エレンはあの日全ての巨人を駆逐してやると言っていた。私も、両親を殺されてつらい思いをして。もうこんな思いを誰にもさせたくないと思っている。
「なまえも死なせねえからな。」
エレンは私の手を握りしめ言った。ミカサを見ると、彼女も静かに頷いた。アルミンは笑っている。
「なまえは私が、守る。」
「私も、3人を守るよ。」
「僕も足手まといにならないようにがんばるね。」
誰か一人でも欠けてしまうと生きていけない気がした。両親を亡くした私に希望をくれた3人。絶対に死なせない。そう心に決めていた。

「今日はここまでだ!」
立体機動の訓練が終わり皆ヘタヘタと座り込む。私は立体機動は得意なのであまり疲れは無かった。それでも息が上がるのはやはりしょうがないのだ。
「なまえ、ちょっとこい。」
「エレン?」
ふと腕を引っ張られ皆から死角になった場所に連れて行かれる。
そこに行くまでエレンはこちらを振り向かなかった。
「あいたっ、」
気に押しつけられ頭をぶつける。普段ならあまり気にもならないほどの痛みなのだろうが、訓練の後にはやはり少しくるものがあった。
「ね、ねえ、どうしたの?」
「なまえ…。」
エレンの顔は訓練の後もあってかいつもよりも赤く、目は潤んでいた。色っぽいなあ、不覚にもそう思ってしまった。がんばって木とエレンの間から抜けようとするがそれは叶わなかった。
「ね、エレン?どうしっうむ!!」
不意に唇にエレンの唇が押しつけられる。びっくりして少し開いた口からエレンの舌が入ってくる。息が、できない。
「はっ、えれ、んぅ。」
「なまえ、んっ、」
エレンの胸を押しても、離す気は無いようだ。酸欠で頭がぼーっとする。こんな感覚初めてだ。
「ふ、あ!なまえわ、悪い…」
突然エレンが目を開き私から離れる。私は腰を抜かしてしまっていて地面にへたり込んだ。
「はぁ、エレン…なんで、」
エレンは申し訳なさそうに頭を掻いた。こんなことされたのはエレンが初めてだ。
「ごめん、なんかさなまえが好きすぎて我慢できなくなった…」
「えっ、エレン」
あっ!と口を押さえて驚くエレンはどうやら自分が口を滑らせてしまったことに気がついたらしい。みるみる顔は真っ赤に染まっていった。
「あ、ああああの、なまえ!!」
「は、はひぃ!」
突然肩を掴まれ私の声も裏返る。エレンは涙目の瞳で叫んだ。
「好きだあああ!!」
うわああと言いながら走っていく。え、言い逃げかよ。そこで初めて自分の頬が火照っていることに気づく。エレンの大声に気づいた他の訓練兵がなんだなんだ?と辺りを伺っている。
「エレン、好きって…」
先程口づけられた唇を押さえる。そして気づいた。ああ、もう戻れない。と。何故そう思ったのかは分からない。でも誰かが私の耳にそっと囁いた気がしたのだ。

────もう昔の三人ではいられないぞ。

と低い声でクスクスと笑うのだ。

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