私はこんなにも無力だった。無力、
一人じゃ何にもできないの。あの日嫌というほど思い知らされた。
「なまえは生き延びなさい。」
「おとうさん、…」
「さ、早く!ここはお母さん達に任せなさい!」
「なん、で?お母さん達は逃げないの?」
「早く行って!!」
見上げると、目、目。無数の手、手。殺される。直感がそう伝えた。弱い。私達は巨人には勝てない。幼いながら私には分かった。みんな死ぬ。巨人の大きな手が降り落ちてきた。

その後は覚えてない。気がついたら船の上一人揺られていた。私、生きてるんだ。でも、お母さんもお父さんも死んじゃった。見捨てちゃった。逃げちゃった。私生き残っちゃった。
「駆逐してやる!」
あぁ、あの子達も大切な人が死んじゃったのかな。私だって、巨人を許したくない。許さないよ。
「お前、独りか?」
「え?」
さっき叫んだ男の子がいつの間にか目の前にいた。あ、女の子もいる…。
「俺ら、母さんが…、」
「私もみんないなくなっちゃった。」
一緒に行こう。彼らはそう言った。
「私が、いいの?」
「もちろん。な?ミカサ。」
ミカサと呼ばれる女の子は静かにコクりと頷いた。
「俺はエレン・イェーガー。こいつはミカサ・アッカーマン。お前は?」
「私は、なまえだよ。なまえ・みょうじ。」
なまえ。エレンは私の名をそっと呟いた。
「俺らと一緒に行こう。」
絶望の世界に光が射した気がした。

独りぼっちの世界で生きる君へ

0617






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