後書き



最期に思い浮かべたあなたはプリムラみたいな姿をしていた、ここまで読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます。

2023年角名誕ということで、1月25日に前半をどんと載せて、3月くらいまでに完結させるね〜と言ったはずが、まさか11月までかかってしまうとは。次の角名誕までになんとか完結できて本当に良かったです。

まずなぜこの話を?というのを先に。去年、及川連載を完結させました。読んだことがない方もいると思うので簡単に。あっちも高校生から始まって、それぞれの夢を追いかけながらアルゼンチンと日本の地球の反対側同士の遠距離恋愛をしていく話になっています。あのお話は個人的にも本当に気に入ってはいるのですが、それと同時に「きっと誰もがこういう決断を下せるわけじゃない。この二人にとってはこの選択が最善だったけれども、これがどの人たちにも当てはまるとは思わない」と思ったのがきっかけです。

確か去年(2022年末)、この連載を書き始めながら呟きページにもチラッと書いたのですが、ここでももう一度書かせてください。

バレーボールという一つのことに全熱量を注いできたハイキューキャラのおそらくほとんど、さらにプロ組ともなればほぼ確実に、同じように何かに熱心になっている子の気持ちはわかろうとしなくてもわかるというか、無意識にでも、いやでも理解ができるんだろうなと思うんです。それを素敵だなぁと思うと同時に、怖いなぁとも思いました。「お互い理解できるからこそ一緒に居れる」だけじゃなくて、「お互い理解できるからこそ自分がこの先はいない方がいいんじゃないかというのも敏感に悟れてしまう」のだろうなというところ。

お互いの目指すべき場所、行きたいところ、やるべきこと。恋人や人間関係、時間、気持ち、その他いろいろ、なにかに寄り道する暇なんてないことが自分自身の体験や現在の環境からわかりきっているからこそ、うまくいかないわけじゃなくて、嫌でも、お互いが邪魔をしないように離れなきゃならない選択を強いられることもありそうだし、強いられなくても悟れてしまう。そんなことも、可能性としてはないとは言い切れないなと思ったんです。

お互いの目指す場所が分かりきっているからこそ、一緒に進む選択を取った及川連載のような二人がいれば、お互いの目指す場所が分かりきっているからこそ、共には行かないプリムラのような選択を取る二人もいる。

そして私は後者をただただ悲しく感じるだけだとは到底思えなかったんです。それって自分がどうしたいか、相手がどうしたいか、自分のことも相手のこともものすごくちゃんと考えて見えてて、理解できてて、何よりも大事に想えているからこそ現れる一つの選択肢だって思うので。

41話の内容で終わらせる案もあったり、本当に全然違う最終話も考えてて、割と途中までそっちまで行くつもりだったのですが、連載を開始してみたら予想以上にプリムラが好きだという声をいただけて、悩んでよく考えた結果変更しました。完全にもう二人での恋愛面での未来の可能性は全くのゼロだよっていうピシャっとした終わり方をさせようとしてたんですけど、いろんな未来が想像できる方が良いかと思って、こういう終わり方になっちゃいました。

なんだかんだであの後会うのかもしれないし、会わないかもしれないし、全然別のところで出会ってしまうかもしれないし、会わないまま違う良い人を見つけてしまうかもしれないし、会ったところでなにも動かないかもしれないし、動いてもまたうまく行くとは限らないし。アランくんが取った三枚のチケットは事前から密かに調べて知ってたヒロインの個展かもしれないし、王道にルーブル美術館のかもしれないし、ムーランルージュかもしれないし……。アランくんの言ったように無理矢理偶然を作り出されても、出されなくても、望んでも望まなくても良いです。

ドラマみたいにここから再び動き出すのも正解、映画のように最後まで別の道を選びエンドロールも正解。そう思ってます。

この先どんな風になったって、ならなくたって、二人があの十年間をただ「成就しなかった悲しい恋の話」なんかで終わらせて欲しくない。角名倫太郎でずっとその「恋としては終わったけれど、自分にとってはずっととても価値のある人物で、決して悲しくはない、永遠に前向きな形の関係である」という、単なるバッドエンドではない話を書きたかったんです。

この二人の行方についてはこちらからは何も言いません。というのもこの先は本当に一切考えてません。ただ、二人の最期はお互いのおかげで夢に全力で幸せな人生を歩めているはずなので笑顔で終われているとそれだけ信じています。皆様の望む二人の今後の人生がもしもあったら、その未来を正解にしてください。もしもこの二人の未来はこうだと思う、あの後はこうなって欲しいというのがあったらぜひ教えてください。その全てが正解なので、解釈違いとかホントに一切ありません。もしも今後番外編とかを書いたとしても、最終話以降の時間の話はその皆様が思い描いてくださった未来を否定してしまうことになる可能性があるので一切書かないです。

プリムラのタイトルは、この先の二人がどんな形になったって、最期には必ず一瞬だとしても思い出さずにはいられないような、人生において重要で、大切な人になるようにという願いを込めて"最期"という言葉をあえて使いました。三十一字になっているのは、現代短歌って本当に型にハマらずどこで区切っても三十一字で終わればもう短歌みたいなフリーなところがあるので、全ての恋が恋愛の終着点としての一般的な幸せの型(所謂結婚だとか最後まで一緒にだとか)にハマらなくても別に悪いことじゃないってことで、区切りとか考えず三十一字に拘って自分なりに考えてみました。プリムラは1月25日、角名倫太郎の誕生花です。

三十話を超えたあたりから、読んでくださる方もだんだんと減ってくるのだろうと勝手に思っていました。でも実際には三十話を超えたあたりから応援や感想のメッセージが増え続けて、凄く驚きました。結構ハラハラしながらこのお話は書き進めていたので、今までのどのお話よりも本当にみなさまが押してくれた拍手や送ってくださったメッセージが力になりました。本当にありがとうございます。

あとがき書く前にもしも質問とかあれば答えるので教えてください〜って初めて募集してみました。送ってくださった方々ありがとうございました!ここからはそれにお答えしていきます。

まず、『どうしてヒロインをデザイナーにしたのか』ということについて。これは本当に、申し訳ないのですが特に深い意味はなく……。話の流れでパリ五輪が最後関わってくるのでパリにいてもおかしくない業界!と考えて、パッと浮かんできたのが天童くんのようにパティシエ・料理関係、そして音楽関連、あと、ファッション関係あたりかなと……。稲荷崎は吹奏楽が強いので、吹奏楽部員からの音楽関連も良いなとは思ったものの、吹部設定は他で使いたいなと思っていたのと、お話内ではあまり深い部分には触れないようにはしているものの、それでも夢の話なので触れないわけにもいかないし、マジで音楽知識なさすぎて難しすぎて断念。周りに服飾関係の方が何人かいたので参考にしながら(かなり好き勝手に描かせていただきましたが)デザイナーに決定しました。

そしてもう一つの質問、『お話を書く時にファッション誌等参考にしたもの、した人物等あるか』というものですが、参考にという意識はそこまで強くはなかったのですが、学生時代はずーっと装苑やVogueを友達と読み漁っていたので、そういうのは頭の片隅には常にあったかもしれないです。明確に参考にした人物はいないのですが、毎度のことですがファッション関連の映画はたくさん見たかなあ……プラダを着た悪魔とかマイインターンとかではなく、「ファッションが教えてくれること」「イン・ヴォーグ」「ダイアナ・ヴリーランド」「ヴィヴィアン・ウエストウッド」「ココ・アヴァン・シャネル」「イヴ・サンローラン」「DIOR&I」「メットガラ」などなど、思い出せる限りでも物語というよりファッション業界や人物のドキュメンタリー色の濃い映画を去年の年末あたりにこれでもかというほど見た記憶があります。文化服装学院の文化祭や、今年のDIOR展に行った時(超有名老舗ハイブランドなのでアレですが)ファッションの個展の展示の仕方はこういう感じにしたら可愛いなあとかちょっと考えた。けど、個展の内容は結局書かなかったな。笑

『懐かしい話題や流行ったものを多く取り入れていた理由』については、シンプルに「懐かしい」と読んでくださった方に思ってもらいたかったのがあります。十年間の二人の過ごした日々の長さや密度をどのように表すかって、そりゃそういうものに頼らず書ける方が良いとは思うのですが、二人の過ごしてきた日々を「懐かしい」と思えるくらいの期間の関係があったと無自覚に思える、「こんなことあったなぁ」と、そういう感情に読む側も浸れるようにと考えてこのような形で取り入れてみました。効果はあったのかなあ。ちなみに前半はこれを結構多めに取り入れています。ヒロインは流行に敏感というよりも、ミーハーな感じがあるようにしていたので。でも、ヒロインの生活が忙しくなると同時にだんだん取り入れるのを減らして、最後の方は全然ないようにしています。

そして『9話と39話を書くにあたって意識した差』と『十年間の始まりの方と最後の方とでの雰囲気の差』について、まとめてで申し訳ありませんが、これは初期を書く時には結構意識してました。初々しさとか、二人で過ごすことにまだ慣れてなかったり照れがあったりというのは積極的に文章中に盛り込みたくて、一応頑張りました。思い返した時に懐かしいとか、あんなこともあったなぁって感情が湧くのって今現在と過去との差の大きさもあると思うので。なので普段の連載ではあまり9話のようなシーンは本編には入れなかったりするのですが、この連載に関しては出会い、告白、ファーストキス、そして初夜のように二人で行う初めてのことに関してはちゃんと書いておこうと思って話数を初期にしっかり割いてます。ちなみに『39話の角名の余裕さについて意識した点』は、特に、ないんです……。あの辺りの話数になると書いてるこちらも"二人はもう長い時を共に過ごし雰囲気には余裕が生まれている"(でも39話地点だともう自分たちの先の選択がわかりきってしまっているので、その点の心境については余裕はあまりない)と頭の中で思い込んでいるので、ただ浮かんできた二人の今の雰囲気とか過ごし方を特に意識せずひたすら言葉にしてました。

たくさん書いてしまった。書きたいことはまだまだたくさんあるのですが、ここに書くまでもないレベルの細かさだったりするので、思い出した時に呟きページとかにちょこちょこ後日書ければいいなと思います。

とにかく本当にこの連載は、最後まで読んでくださった方々に感謝の気持ちが止まらないです。ありがとうございます。この連載を書き終えられたこと、この連載を好きだと言ってくださった多くの方がいらっしゃったこと、全てが今後の創作活動のさらなる励みになると確信しています。書き始めた当初はやっぱりこういう流れのお話は載せない方が良かったのかも、となりながら終わるのかもなあと思っていたのに、まさかここまで書いて良かったと思いながら終えられるなんて思ってもいませんでした。

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。これからもプリムラ、そして当サイトをどうぞよろしくお願いいたします。

2023.11.12 栄田
- ナノ -