あとがき



若き日の、最後までお読みくださりありがとうございました。瀬見くんは初めてでしたね。白鳥沢では天童くんの連載はありますがフランスでのお話だったので瀬見くんは当サイト初登場でした。このお話は過去に重点を置いているので、現在の瀬見くんとのお話があまりないんですけど、いつかゆっくり現在の二人も番外編という形で少し書けたらなぁと思います。

『若き日の 心の騒ぐ おもむきに 桜ちるなり 風立ちぬらし』。与謝野晶子の詠んだ歌です。若き日の心には様々な感情があって、その青春時代の心が騒ぐように桜が風に吹かれて散っている。目の前をひらひらと不規則に舞う桜の花びらのような安定しない感情がキラキラと揺れる青春時代、素敵ですね。

思い出の中に生きている当時好きだった男の子。誰にするか候補は複数人いたんです。でも思い出は嗅覚と聴覚に特に残り易いって言うじゃないですか。そう考えた時に、あぁ瀬見くんだなってなりました。懐かしい曲を聴いたときにぎゅっとなる感じとか、そういうの瀬見くんと共有できたらなぁと。

瀬見くんは当時から何かの楽器をできたのか否かがわからないので、現在バンドマンをしているって設定のみを見て、元から興味はあったけど始めるきっかけになった女の子という形で、瀬見くんにもヒロインが影響を与えていた形にしたくて当時の瀬見くんは音楽好きではあるけど楽器はできない設定にしました。

というか公務員って副業とか禁止だけどバンド活動ってどこまで大丈夫なの!?って思って無駄に調べました。実際に活動してる人のブログ読んだり、公務員の資料なんかをみたり、実際のチケットの売り方をみたり。やっぱ利益が出過ぎちゃうのはダメみたいですね。なかなかインディーズの社会人バンドでその立ち位置にいくのは難しいので、引っ掛からなくてよかったって謎に売れてはいないことに安心したりもして。ごめんね瀬見くん。この話は取り入れるか迷ったけどいらなすぎるのでやめました。番外編とかおまけで書けたらな…笑

六話の後半に瀬見くんと二人で部屋で過ごす話があるんですけど、個人的に気に入っているシーンの一つがそれです。楽しいとか気恥ずかしいとかいろんなものが混ざり合って自然と笑えちゃうような若さとその雰囲気がいいなと思って(笑)

若さゆえに深く考えず理由もなくという二人だったからこそ、「これといった理由はないけどお互いがいるならそれ以外の理由なんてもういいって思える空間」を過去の思い出として散りばめたくていろんなシーンを考えたなぁ。

思い出の中のヒロインは今よりももう少し明るくて、今のヒロインは少し落ち着いてます。でも瀬見くんと再開してからはまた少しだけ明るく…なるようにしてます…会話の雰囲気とか。瀬見くんがいた時、いない時、そしてまた一緒にいれることになった時。思い出の彼と一緒に当時の明るい私も戻ってきたということを、緩やかーに意識しました。

読んでる人も気づかないかもしれないし、ヒロイン自体ももしかしたら気がついてないかもしれないけど、その気がつかない程度に僅かで、自然で、でも確かな変化をもたらしてくれる瀬見くんの存在、それが書きたかったです。

二人の間に流れる曲の歌詞が恋愛ソングなのかどうかは詳しく書いていません。バラードなのかどうかとかもね。その曲がゴリゴリのロックでも、アイドルの曲でも、歌詞が全然恋愛と関係なくても、歌詞の無い曲だとしても、記憶を共有する二人にとってはどんな歌詞で曲調だとしてもそれが当時の思い出のラブソングになるのかなぁと思って。設定上マイナーバンドのオリジナル曲とは書いておりますが、皆さんなりの懐かしい「あの頃の曲」、ぜひ当て嵌めてみてください。

皆さんが「どっかのサイトにこんな瀬見くんの話があったなぁ」といつか思い出してもらえる瞬間がもしもあったらとても嬉しいです。

忘れられない大切な記憶だった瀬見くんと、再びいつかの思い出になる今を共に歩いていくお話でした。

ここまでお読みくださり本当にありがとうございました。


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