場地
「場地、もういい…!」
「あ?オマエから言ったんだろうが」
それは一体何分前の話だ。あ、キスしたいな。そう思ったから何も考えずにそれをそのまま口に出したらこのザマだ。もういいって何度言っても止まることなく降り注ぎ続けるキスに、私の方が耐えられなくなってしまった。
「もう無理、降参」
「体力ねぇなァ」
やっと私を縛りつけるその腕から力が抜けたと思ったら、顔の両脇に手をつかれまたもや身動きが取れなくなる。もうシーツも制服もくしゃくしゃだ。上がった息を整えるように大きく息を吐くと、その様子をジッと観察していた場地が「美味そう」と言いながら額に伝った汗をペロリと舐めとった。
「休憩終わりな」
「まだやんの!?もう体力ない、無理無理」
「自分から誘っておいてそれはねぇよ」
私を見下ろすその表情は肉食動物が狩りをするときのそれだ。狙いを定められた私はそれから逃げることはもうできない。ニッと吊り上がった口角から僅かに覗いた鋭い歯が抵抗しようとする気をゼロにさせる。
「もう限界なのに……!」
「まだいけんだろ。マジな限界まで試してみるか?」
ニヤニヤと楽しそうに笑ったその顔を見て、きっとまた私はいらないことを言ってしまったなと若干の後悔をしながら、シャワーのように全身に降り注ぎ続けるそれを受け入れるしかなくなってしまった。