菖蒲華
鳴り響いた試合終了の合図に力が抜けた。なのにどうしてだろう、体が重い。力は確かに抜けたはずなのに、どっと疲れている。これだけの接戦を繰り広げたのだから疲れるのは当たり前のことだけど、そういう疲れじゃなくて、もっと違う何かだ。
「全国行き決定ー!」
マネージャー達が嬉しそうにそう言ったのを合図に部員達もドッと歓声を上げた。夏のインターハイ。今年も無事に全国に行ける。あの人達がいなくても、俺たちの代でも。
「整列」
ありがとうございました。頭を下げると大きな拍手と共にいろんな声がかけられる。その全てが俺たちの勝利を祝福するもので、ほっと心を撫で下ろした。
今年はダメだなと、そう言われずに済んで良かった。ぐるぐると渦を巻いていた思考が少しだけ動きを緩めて血の巡りを良くさせた。
その一方で新たな思考が今までのそれらを乗っとるように姿を見せる。
まだまだ。ここが終わりではない。ここからが本当の勝負だ。また少しだけ重くなった頭を上げた。パチパチと鳴り響く無数の拍手が、ノイズがかったように僅かにブレて聞こえてくる。
菖蒲華
(あやめはなさく)あやめの花が咲く
六月二十六日〜七月一日