梅子黄


少し前に梅雨入りをして、それからはずっと天気が不安定だ。どんよりとした雲が全てを覆い隠して何だかこっちまで気分が下がる。俺は席替えをしてもいつも大体後ろの方になるから教室全体を見渡しやすい。この席からはコウの姿がよく見える。

彼女は手元と黒板に視線を忙しく動かしているようで、頭がひょこひょこと上下に動いていた。書き写すものが多いこの先生の授業は、手を止めたら負けだなんて前に真剣な表情で彼女は言ってたっけ。

サラサラと書き流してしまう俺とは違って、彼女のノートは教科書のように要点がわかりやすくカラフルにまとめられていて、字もとても丁寧だ。俺も他人に見せられないようなそんな字ではないけど、それでも彼女の綺麗な字に比べればだいぶ劣るだろう。

あと十五分もすれば授業が終わって、そしてまた部活の時間がやってくる。湿気で少しだけボリュームが増した彼女の髪の毛先が、頭が動くと同時にぴょんぴょんと揺れる。それを先生の話を聞き流さないようにしながらも観察し続け、自然と口角が上がった。

梅子黄

(うめのみきばむ)
梅の実が黄ばんで熟す
六月十六日〜六月二十日

  

 
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