葭始生
「あのっ、先輩…!」
「どうかした?」
「自主練付き合って貰えませんかっ!」
うん、いいよ。と二つ返事で了承した。過酷な練習の後でもしっかりと勢い良くスパイクを決め続ける後輩に感心する。
なんだか懐かしい。毎日のように木兎さんの自主練に付き合った日々。まだやるのかと音を上げたくなるほどの量だったけれど、憧れのプレイヤーと過ごすその時間は夢のようで楽しかった。
「赤葦先輩、全然疲れてなさそうですね」
「そう見える?結構俺も疲れてるよ」
「俺ももっと頑張ります。先輩みたいに凄くなれるように」
「俺は、別に凄くはないよ」
昔も今も至って普通だ。凄い人たちの中に紛れ込む普通。それでも初めてここに来た時よりは体力がついた。技術もついた。僅かに度胸もついた。少しずつ、強く、なっていると思う。あの人に近づけているだなんて、そんなことは烏滸がましくて考えられないけれど。
自分の中の?ここまで出来る?のボーダーラインは、確実に上昇している。
葭始生
(あしはじめてしょうず)葦が芽を吹き始める
四月二十日〜四月二十四日