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「憲兵団に入って、内地で暮らすためです!」

訓練兵に入ってすぐの事、教官の怒号が響き渡っていた。

通過儀礼であるこの行為は毎年の事らしい(耳をそばだてて聞こえた内容だが)

自分も言う気満々で待機をしていたのに、目の前でスルーされてちょっとショックを受けてた時にそんな言葉が聞こえた。

ふとそちらに目を向けてみれば、青年が教官に頭突きをされる瞬間だった。

『・・・・・・・・・・・・・・・・。』

彼の言い分は最もだと思う。

訓練兵時の成績が上位10位以内の者は希望部隊が「調査兵団」「駐屯兵団」と「憲兵団」には入れる事が出来る許可を貰えるのだ。

憲兵団になれば、ウォールシイナ通称「内地」で暮らせると言う事だ。

ここに居る大半がそれを狙っているのだろう…まぁ、その気持ちを非難する気も権利も私にはない。

人が生きたいと思うのは当然の権利なのだから。

それを誰かが遮っていいものではない・・・・たとえ誰であろうと。




「なぁ、エレンってシガンシナ区の出身だよな?」

食事中、そう声をかけられて手を止めてその方向を見た。

そきには見覚えのない顔があって、誰だ?と思いながらも「そうだ。」と頷いて見せた。

自分の返答に聞き耳を立ててたやつらは一斉に立ち上がり、自分の回りに群がった。

「じゃぁ、見たのかよ!?超大型巨人を!!」

興奮した様子で一人が私に聞きに来たので「うん」と返事をすれば

「「「「「おぉー!」」」」」と声が上がった。

巨人を見たことのない、同じ訓練兵の人たちは大型巨人や鎧の巨人に興味があるらしく俺を質問攻めにした

俺以外にもシガンシナの出身は居るが、聞きにくい部分もあったのだろう

ここが聞きどころだと思ったのか、一斉に囲まれて質問攻めにあっていたのだった

「じゃぁ、普通の巨人はどうだった!?」

その質問が聞こえた瞬間に脳裏に移った二年前のあの光景に食事の手が一瞬だけ止まった。

『普通の巨人hバシンッ!!

喋ろうとしたその声を遮るように大きく響いた音に誰もがその方向を見た。

「貴方たち…エレンに質問しすぎ」

クイッと首を傾げて、漆黒の黒髪から見える鋭い眼光が質問していた彼らを睨んだ。

ミカサのあの眼光に耐えられる強者などいなく、蜘蛛の子散らすようにみんなが散って行こうとした時だった。

「ブフッ」

沈黙を破る音が聞こえ、そちらに顔を向ければ見知った顔があった。

「悪い、悪いついな・・・。」

それは先ほどの訓練前に憲兵団志望だと言った青年が座って、馬鹿にしたような目つきで俺を見ていた。

「女に庇ってもらう奴が、随分と強気に言ったもんだと思ってな・・・。」

そう言われて普通の男はムッとして喧嘩に発展するんだろうが、なにせ自分は今まで女として生きていたので

(あぁ!!わすれてた!!)

と、なんとも間抜けな考えに陥っていたのであった。

そう言えば、性別逆転したからミカサが俺に対する態度はダメなのか。

14年の女生活ですっかり男としてのプライドを忘れてしまったぜ・・・。

『あぁ、そうか・・・・ありがとう。大事な事を思い出したよ』

と、私が予想外の事を返すもんだから彼は驚いた顔をしたのであった。

「お、おう。俺も悪かったな・・・」

そう言ってその場は収まったのであった。




『と、言う事だからミカサ。お前はもう俺にいろいろ世話なんてやくな』

「で、でもエレン!!私はエレンを守る義務がッ!!」

『義務なんてないし、お前が俺を守ってたら周りが怪しむだろう。お前が言った事なんだから・・・・』

「分かった・・・じゃぁ、エレンの事を怪しむ奴が現れたら口封じすることにする

『・・・・・・・あれ?分かってなくね?』


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