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この世界には巨人という化け物が存在するらしい。

らしいと言うのは見た事がないからだ・・・巨人は私達の回りにある大きな壁の向こうにいて100年の間人々は巨人に会ってないのだと

父さんから聞いた。

私は聞いた。

『ねぇ、もし巨人が入って来たら誰が戦うの?』

そう素朴に思った質問に父は優しく答えた。

「それは街を守ってくれる駐屯兵団の人だ。ハンネスを知っているだろう?エレン」

その人の事はよくしっていた。

ハンネスさんよく家にきては父と母と親しく喋っている人だった。

まず最初に目に入ったのは二輪の薔薇。

背中に咲いている薔薇を見ていた私に気付いたハンネスさんは、しゃがみ込んで私と同じ目線で話した。

「俺の背中のこれはな、駐屯兵団の証さ」

そう言って優しく教えてくれたあの人だと、私はすぐに分かった。

そして私は更に父に質問した。

『ハンネスさんたちは巨人を見た事があるの?』

「え?」

私の質問を予想していなかった父は驚いた顔をした。

私は更に続けた。

『100年も巨人は来てないのでしょ?巨人を見て、恐怖を味わう事はないの?人々を守る武器を自分のために使うんじゃないの?』

そう聞いた私の質問に、ついに父は答えようとはしてくれなかった。





『ねぇ、アルミン。壁の外の世界には海も山も川もあるんだよな?』

ある日、何時もの散歩からの休憩地点で私はアルミンに聞いた。

アルミンの両親は壁の外について、研究している人たちだと聞いたからだ。

私はここに生を持って今まで一度も「海」を見たことがない。

『どうして海を見に行けないの?』とアルミンに聞いたら彼は恐怖に顔を強張らせながら言った。

「それは巨人が壁の外にいるからだよ。僕たちは壁の中にいる事で自分達の身を守っているんだ」

そう言ったアルミンに私はある事に気づき、そして絶望した。

その時私は初めて認識したのは。

自分は・・・自分達人類はまるで。

檻に閉じ込められた奴隷のようだと・・・・。

巨人という恐怖の塊から逃げるために、自由も夢も希望ものなにもない壁の中で縮こまり。

残り少ない人間同士でなんとも馬鹿げた争いをしている事に絶望を感じた。

ここまで人間は腐るのかと心底、痛感する事件があったからなおさらだった。

「そうだよ・・・でも、それがどうしたんだい?エレン」

アルミンが心配そうに私の顔を見た。

私は口を開いた。

『私は海を見たいと言った。だけど私はそのために何もしなかった。それは誰かがそうしてくれる未来を望んだから…でもそれじゃダメだ、ダメなんだよ。』

「エレン?」

心配そうな顔でアルミンがわたしを見ているがそんなの気にしちゃいられない。

『誰かじゃダメなんだ。自分じゃなきゃ…じゃなきゃ世界はきっと変わらない!!』

私は馬鹿だ、私の生前の座右の銘は「誰かじゃなく自分が」だったと言うのに、すっかり忘れてしまっていた。

決意するように目の前に拳を作り上げ、それを胸に持って行った。

誓いの儀式のように、目を閉じた。

『私は自分に、お前に、世界に誓おう!必ず、外を取り戻す事を!!』

そう言って高らかに声を上げれば、アルミンはその場に立ち上がって私の手に自分の手を重ねた。

不思議に思って彼の顔を見れば、アルミンは決意を持って目で私を見返した。

「僕も自分に、エレンに誓う。その手助けとなる事を!!」






『「約束だ!!」』


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