03


 エドワードとクラウディアは、四歳年が離れている。
 幼い頃のクラウディアは、よく言えば明るく奔放。悪く言えば落ち着きの無い少女であったが、
 少しずつ淑女らしく落ち着いた様を見せるようになった。

「いやあ、あの頃は本当にお恥ずかしい限りで」
「お父様ったら。もう、その話はよして下さいな」

 懐かしそうに当時を語るウェンライトと、恥ずかしそうに嗜めるクラウディアを見て、
 エドワードは小さな笑い声を漏らす。貴族の令嬢とは思えない程に、言いたいことをすっぱり口に出すクラウディアが、
 エドワードは苦手だった。けれども、彼女の明るさや、自分を曲げないその強さに、
 心を救われていた。両親を失ってから、負い続けていた傷みなど気にさせない程の、
 その力強い言動を、エドワードは愛おしく思い始めたのだ。

「そして、その結婚式についてなのですが」

 エドワードが本題への話題を振ると、過去の思い出話に浸っていた二人は、さっと体制を整える。
 相談する内容は、式を上げる場所。招くべき貴族や著名人。魔物に備える為に、配置させる魔物ハンターの人数など。
 上げればまだまだ出てくる。

                    ◆

 一通り話し合い、ある程度固まってきたところで、少し休憩を取ることにした。
 ウェンライトはにこやかに微笑んで、一服する為に部屋から出て行く。
 紅茶に口を付けるエドワードに、クラウディアが声をかけた。

「エド様」
「ん、なんだい?」

 クラウディアは柔らかい笑みを浮かべると、ソファーから立ち上がった。
 エドワードの隣へと移動する。そして、顔を覗き込みながらまた笑った。

「私、今とても嬉しいですわ。もうすぐ、エド様と結婚出来ると思うと、すごく嬉しいのです」

 それを聞いて、エドワードは頷いた。

「僕も同じ気持ちだよ、ディディ」

 エドワードは、クラウディアの手を取った。しっかりと握り締める。

「ディディ。僕は君を、絶対に幸せにしてみせる。二人で、末永く幸せに暮らそう」
「はい、エド様!」

 力強く言うエドワードに、クラウディアはその手を握り返す。
 そのやり取りを聞いていたクロードは、微笑んでいた。

 その笑みに隠された真意を、今は誰も知らない。



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