家庭訪問は手土産必須 1/2
江戸、かぶき町の一角。 住民には馴染み深いスナックお登勢の二階には「万事屋 銀ちゃん」の看板がデカデカと掲げられている。 この万事屋である家主は近頃攘夷志士に巻き込まれたり天人の少女に家の食材を食い荒らされる被害に遭っていた。
今日も、依頼を受け屋根の修理をしていた所、真選組の輩に絡まれたばかりだ。 病院によって手当てをしてもらい、無事修理を終えて、今帰ってきた。
「たでーま……ァ?」
玄関に目もくれず靴を脱ぎ散らかして行くのが何時もだが、ここ最近の疲労も溜まり、足元を見てばかりだったこの日、珍しくゆっくり靴を脱いでいると、靴が一足多い。 それはここ暫く顔を見せていない少女の物だった。
「あ、銀さんお帰りなさい。 樹さん来てますよ。」 「おう。」
居間に入れば、少女──樹は我が家同然でソファに寝転がっていた。
「おかえり。」 「珍しいな、てめぇが来るなんざ。」 「桂の噂聞いた。 また攘夷するって?楽しそう、混ぜてよ。」 「誰がするか!!」
少女との関係は、そう、旧友だ。 池田屋にて勝手に人を巻き込み爆弾を爆発させ迷惑かけるだけかけて逃げて行く桂と多少の差はあるものの、似たようなもの。旧友だ。
桂に元攘夷志士だとバラされ、新八が樹に対して何か探りを入れられても面倒なのだが、メガネはメガネなりに察しがよく、深い事は何も聞いては来ない。
「アレ、持って来たんだろうな。」 「ん。」 「銀ちゃん早くするネ。樹が言うから銀ちゃん帰って来るの態々待ってあげたアル。これ以上待たせるなヨ。」
態度だけはデカい小娘にケッと唾を吐いて台所へ向かう。 樹がこの万事屋を運悪く嗅ぎつけたのは新八に出会う前で、まだ多少自分がやさぐれていた時期だったか。 あの頃は意地張って中々樹を家に入れなかったのだが、ある条件を提示されたことで仕方なく折れて、定期的に遊びに来ることを許した。
「白夜叉。」
声をかけられ振り向けば、樹が台所の入り口に立って目をギラつかせていた。 はぁ、と一つため息。
「誰が白夜叉だクソガキ。銀時だっつってんだろーが。」 「左肩庇ってる。誰とやったの?」 「どこの犬夜叉だてめぇは、嗅覚だけは立派だなオイ。」
冷蔵庫から取り出したなんともおしゃれな、今の自分たちの給料じゃ到底通えそうもない店の箱を取り出して、樹の頭を一つ叩いて、横をすり抜けて、居間に戻る。
「…痛いんだけど。」
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