04嫌いじゃないよ
『はあ…、』
『いい加減、その武器撫でまわすの止められねぇのかお前は。気持ち悪ぃな。』
『うん、暫くは無理…』
『…』
うっとりとメガトロナスのサイン入りのブラスターを眺めながらフェザーはランチを摂っていた。
一頻り、教室で騒いだ後今度は自分の世界に浸り始めた。ショックウェーブが好きだとか、メガトロナスに会ってテンションが上がるだとか、つくづく男の趣味が悪いとスタースクリームは頭を痛めた。今は細身で背の高い機体が人気の筈なのに。彼女ときたらごつめのデカい奴を見てきゃあきゃあはしゃいでいる。
『…そうだ!サイン貰ったお礼にメガトロナスに武器をプレゼントしようかな!でも素人の造物なんて使いたくないかなぁ…』
『マジ可愛くねェな、お前。』
『うるさいなー、いいの!大人しくエネルゴン食べてなよ、もー!』
『うぐっ、うがっ、○×△□〜!!』
無理矢理大きめのエネルゴンを口に突っ込まれスタースクリームは言葉にならない悲鳴をあげる。フェザーはそれを見てけらけら笑うと、開始前のチャイムが鳴ったのを聞いて広げていた私物を手早く纏めた。
『よし!今日は昼からラボの手伝いに行くんだ!スタースクリーム、またね〜』
『…』
ショック〜あ〜大ショック〜、即興の歌を歌いながら、スキップしてフェザーは荷物を纏めた。ブラスターを見て嬉しそうにまた微笑む。
指定されたラボに滑り込むと、ショックウェーブは既に作業を始めていた。 パタパタと走る足音にモノアイの瞳が動く。目が合うと、彼女はそれだけでハッピーな気分になれた。
ショックウェーブの周りには金属生命体は大抵いない。寡黙さとストイックさ故の当然の結果だが、そんな事を気にしないフェザーは遠慮なく彼の隣に並んだ。
『…邪魔をするなよ。』
『はいっ!お任せ下さい。』
目新しい存在にショックウェーブも内心、少しばかり戸惑っていた。こんな時、表情が極端に乏しく良かったと思う。彼女に僅かでも動揺しているのを悟られるなど彼にはもっての他だった。
雑そうに見えて、手際は良い。勘だけではない知識がフェザーの仕事からは垣間見えて、ショックウェーブは口に出さないが初見からの評価はプラスに改めていた。
『ショックウェーブ、私、この前メガトロナスに会ったんですよ!』
『…そうか。』
『見て!サイン貰ったんです!』
『容量はちゃんと見てるんだろうな。』
『はい!勿論です!』
他の金属生命体が決して持ち掛けない世間話をフェザーはショックウェーブに話した。初めの内ははらはらと遠巻きに見ていた他の研究生達も彼が普段通りなのを見て徐々にその光景にも馴れていった。
『ねえ、ショックウェーブ。この大きなプロトタイプはどんな金属生命体用なんですか?』
『名前くらいは聞いた事があるだろう…この星で最古の生命体、プレダコンだ。まだ試作段階だが、成功すれば遠い昔に滅びた種を甦らせる事が出来る。』
『へえ…スゴいですね。どんなボディでどんな風に動くのかなあ』
未来へ心を踊らせて、フェザーは楽しそうに笑う。ショックウェーブはやかましいと思いつつも、その素直な反応を眺めるのが嫌いではなかった。
『フェザー、』
『はい?』
『俺は不変と、退屈が嫌いだ。』
そう告げられた言葉は彼女の耳を上滑りした。ショックウェーブは真面目に呟いた詞だったが、初めて名前を呼ばれた事にフェザーはすっかり浮かれてしまい、聞いていなかった。そしてあろうことか薬剤の分量を見事に間違え、雷を落とされる事となり結局この話題は再度上がらなかった。
(貴様の頭が沸いていることはよく分かった)
(ごめんなさいぃ〜ショックウェーブ!もう黙るから!あっでも一つだけ聞きたい事があるんですけど!!)
(…)
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2014 02 24
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