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08放し飼いを望むなら


『オレは優しいからな。初めに約束した通り、お前を船に閉じ込めたりしねェ。』


自らの艇にルナを下ろして、ロックダウンは豪快に笑う。そして棚を漁り小さなリングを選び出すと、それを彼女の首に嵌めた。

――カチリ。鈍い音がして、銀の輪がルナの首元で鈍く光る。
緑色の鉱石細工を指先で撫でるとロックダウンは満足そうに眼を細めた。


『似合ってるぜ?お嬢さん。用がある時はこれで呼ぶ。』
「…私を、外に出してくれるって事?」
『ああ。だが気をつけな?妙な真似しやがったら、その首がボタン一つで飛ぶからよ。ヨロシク。』


宇宙船から下ろされる。突然与えられた、僅かばかりの自由。少し離れると船は視界から消え去り街中に出る。

(電磁バリア……)

平凡なビルが立ち並ぶ映像がフェイクというにはリアル過ぎる出来で目の前に広がっている。ルナはそのまま背を向け、街の中心に位置するサムダックタワーへ駆け出した。

――会いたい、皆に。
どれほど時間が経っているか分からない。けれど変わらないタワーに、ルナは息をきらせてただ走った。


『……ルナ?』


不意に。呼び止められた声に足を止めて振り返る。
鮮やかなイエローのパトカー。間違いない。ビー…バンブルビーだ。足が震えて動かない。
何とか名前を呼ぼうとして口を開きかけると、先に助手席のドアが開き赤い髪の少女が飛び降りた。


「ルナ!ちょっと、今までどこ行ってたのよ!?」
「サリ!」


スピードを緩めず飛びついてくる少女をしっかりと抱きしめる。
…夢じゃない。指先から温かな熱が伝わる。今更のようによく分からない震えが来て、不意に涙が溢れた。


『わ、サリ!ルナの目から潤滑油がっ』
「バンブルビー、ビークルモードになって!ルナ、もう大丈夫よ。」


黄色いパトカーになったバンブルビーにルナを押し込むと、サリはこれまでの事を尋ねてきた。
どうやら彼女が消えてから半年程経っているらしく、ディセプティコンとの抗争で命を落としてしまったと思われていたらしい。

ぽつり、ぽつり。ディセプティコンに攫われていた事を二人に話す。核心部の都合の悪い部分は省いて。刻まれた記憶。おかしな事に途中でスィンドルの顔が脳裏に浮かぶと形容し難い寂しさが心を刺した。
言葉が途切れたのを疲れたのだと思ったのか、サリは手を握って何も言わずに笑う。


「とにかくあなたが無事で良かった。今夜はパーティーね。」


心の底から嬉しい言葉だった。けれど、うまく笑えていたかルナは不安だった。
冷たい首輪の静かな自己主張は消えず、彼女は指でそっと触れる。
繋がったサリの手を少しだけ強く握り返すと、バンブルビーのシートにルナはゆったりと身を預けた。
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2012 07 07

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