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番:Foolishboy(ホイーリー)


※ディエゴガルシア日常話。


ディエゴガルシア基地にはホイーリーにとって所謂"オキニイリ"の人間がいる。

ディセプティコンの側から鞍替えして、オートボット側についたもののすぐに全てが円満解決といったわけではない。
当初は(最も今もであるが)彼を心良く思わない人間、またオートボットも当然のように存在し見えない所で度々小競り合いが起こっていた。
赤い瞳を裏切りの象徴とされてしまう事もしばしば。ただ破壊する事、支配される事が嫌になって、普通に暮らしたかっただけなのに。向けられる敵意に喚いて、威嚇して。
彼女が初めて基地に来たその日も、ホイーリーは心ない人間に格納庫の隅で偶然を装い蹴られていた。


「ちょっと!今、その子に何したのよ!」


彼のそんな日常を崩したのは少し高めの怒声。
現れたヒスイは自分よりずっと大柄な男に毅然とした態度で食ってかかり、ホイーリーを後ろへ隠した。
初めは馬鹿かと思った。所詮生身の人間から暴力を受けた所で大したダメージはない。
その気になれば簡単に殺せる。それを行えば、オプティマスやオートボット達に破壊されてしまう故、しないだけだ。別に平気なのに何を必死になっているのか。
けれど振り返って心配そうな視線を送ってきたヒスイを見て、ホイーリーは何故かとてもホッとしたのだ。


「…初めまして。私、本日付けでこちらに配属になりました、ヒスイです。」
『!ナ、ナンだオマエ!…ニ、ニンゲンに教えてやる名前ナンテねェヨ!』


差し出された手に驚いて、彼は思わずそれを払いのけて走り出す。
尖った指先に小さな彼女の悲鳴が聞こえたが、気にしている余裕はなかった。与えられた優しさに気が動転して慌てて逃げた。

――あの時の事をヒスイは覚えているだろうか?
仕事中、静かにしていれば彼女は共にコンピュータールームにいる事を許してくれる。他のオートボット達はそんな事出来はしないからこの瞬間、自分だけが彼女の側に居られるというのは手放し難い優越感だ。
キーボードを叩く、大きな傷痕のない手の甲を見てホイーリーはこっそり安堵のため息をつく。その音声が届いたのか、彼女は不意に指先を止めて視線を静かに下方へずらした。


「…ホイーリー?退屈になってきたんじゃない?」


つまらないならバンブルビー達と一緒にいたら、なんて的外れな事を言うヒスイ。ホイーリーはそれに首を横に振ると、ラジコンカーに変形し彼女の足に突進した。


「、った!コラッ、何する」
『…ゴメンな、ヒスイ。』


小さな声で、ホイーリーは足元で呟く。
異変に気付いたヒスイは両手で彼を持ち上げると、不思議そうに目線を合わせた。


「…ホイーリー?何かあったんですか?」


彼女は変わらない。出会った頃から穏やかで、少し鈍くて。心の変化には気づくのに肝心な所には気付かない。

(オマエの名前、俺ガ呼んでヤッテルのに…!気付けよ、このバカ!)


機械的な不協和音を奏でながら、ホイーリーは"何デモネェヨ!"とむくれてしまう。あの時触れられなかった手をちょんとつついて、彼は罰が悪そうに俯いた。

foolish boy〜素直に為れない愚か者〜

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ホイーリー番外編。紅あずま様へ捧げます。
30000hitリクエスト有難うございました!
2011 10 25

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