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29崩落の音色


崩れた瓦礫に手を伸ばす。生命反応はまだあり、少し掻き分ければ黒く流れる髪が現れた。
至近距離で銃をかざす。人間一人に必要ない武器ではあるが熱光に掻き消える一瞬の儚い炎をショックウェーブは気に入っていた。

死の光が武器の先端に集まり始める。
と、ショックウェーブの前に、ぐいと押し退けるよう降りる影。振り返ればそこには彼の仲間の姿があった。


『コレは俺の玩具だ。勝手に殺されては困る。』
"…"


単眼が訝しげにすっと細まる。ヒスイが何とかぼんやりとした視線を上げれば、そこには見知った銀色のボディが見えた。
サウンドウェーブは彼女の視線に気がつくと、ケーブルをぬらりと伸ばしてくる。抵抗しようと体に力を込めるが、岩に挟まった足が動かず 容易く身体は絡め取られた。
カメラアイの前までヒスイはゆらりと持ち上げられる。


『レーザービークの……奴の最期の思念が、貴様に解るか。』
「…」
『お前を自分の手で消せなかった無念だ。ヤツはお前をもう少し傍で生かし、殺したかったらしい。』


返す言葉はない。だが、その言葉にヒスイの表情は悲しみに曇った。
満足げな表情でボサボサになった髪を長い爪先で器用に整えると、サウンドウェーブは口もとを歪めて薄く笑う。


『やはり黒髪はいい。闇の色は美しい。』


まるで口付けるようにサウンドウェーブの顔が近づいてくる。思わず顔を背けそうになった、その時、一陣の強い風が辺りを駆けた。
青い閃光。ビルを襲っていたディセプティコンの首が遥か頭上から地面に落ちる。


「、オプティマス!」


ジェットパックを装備したオプティマスが空を悠然と駆ける姿。彼女の声に反応してもう一度、軌道を修正しこちらに戻ろうと体制を直す。しかし先に動いたのはショックウェーブ。彼がキャノン砲を構える間にサウンドウェーブはビークル変形し、ヒスイを拘束したまま走り去った。


「嫌…、ッく!」
『安心しろ。すぐに殺しはしない。貴様にはいいものを見せてやる。』


嫌な予感しかしない囁きに、体は固く強張るばかり。黙ってぎゅう、と小さくなるとその沈黙にサウンドウェーブは低く笑った。


『ニンゲンとは不便だな。顔色が変わらずとも、その生きている血脈で心が手にとるように分かる。』
「…」
『そう怯えるな。抵抗しないのは正しい選択だ。』


ぐい、と。顔を固定され前を向かされる。ビルの脇を抜けて開けた彼女の目の前に飛び込んできたのは拘束された赤いオートボット。
息を呑むその間に、サウンドウェーブはビークルモードから変形し我が物顔でその掌にヒスイを乗せた。


『サイバトロンが間もなく転送されてくる。貴様らは明日のない地球と共にここで滅びるがいい。』

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2013 02 01

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