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04友人


学校終わりに校門を出ると後ろから声を掛けられる。
振り返るとそこには小学校からの幼馴染みが二人いて、自然と顔が綻んだ。


「スモーカー!ヒナ!」
「ハロー、ヒスイ。明日、休みだしちょっとお茶して帰らない?今、連絡入れたところよ。今日、塾あったっけ?」
「ううん、大丈夫。行くよ!」


昔から迫力のある美男美女で、二人は目立つ存在だった。知り合った当時はまだ子供で全く気にしていなかったが、今では生徒会でも中心的な人物であり人気のあるカップルだ。(本人達いわく付き合ってはいないらしいが)少し気後れするもののヒスイは今でもたまに三人で会える時間を大切に思っていた。


「じゃあ行きましょ!近くのカフェで今、いちごフェアやってるから」
「うん。」
「メルヘンな店じゃねぇところにしろよ、ヒナ。」
「味が良ければ外観なんて気にしないわ。スモーカー君、小さな事を気にしていてはレディとは付き合えなくてよ。」


ヒナの言葉にスモーカーは眉を寄せて溜め息をつく。兄に負けず強面だが、甘党で優しい性格の彼は文句を言っても折れてくれるのは最初から分かっている。これも昔からの事だ。
公園でアイスを買い食いする方が気楽だと溢す彼を遠慮なく蹴るヒナを見て、ヒスイは相変わらずだなと吹き出した。

***

「え、明日、お兄さんのとこ行くの?」
「うん。」
「…お前、アニキとそんな仲良かったか?」
「悪くはないと思うよ。別にいつも一緒だったわけじゃないけど。」


フルーツパフェをつつきながら、ヒスイは週末に県外に出かけることを話した。電車で三時間ほどあれば行ける距離なので、そんなに突っ込まれる事ではないと思ったがスモーカーの探るような視線に内心首を傾げる。まあ兄の話を話題に出す事など考えてみれば今までなかったかもしれない。頭の中に兄でなく、ドフラミンゴの顔が浮かぶ。あ、やだ、なんだか気分が沈む。ヒナがそこで違う話に変えてくれたのでヒスイはほっと息をついた。


「スモーカーは卒業したらすぐに働くんだよね。」
「ああ、別にたいして勉強に興味ねぇからな。」
「頭いいのに…。ヒナはもう受験先決めたの?」
「一応候補はね。もしかしたら海外に行くかもしれないわ。」
「そうなんだ…。後、一年…卒業したらついに皆バラバラかあ。」
「あら。クールな貴女が珍しく感傷的な事を口にするのね。」
「え、私、クールかな。」
「普段、あんまり感情的な事、口にしないじゃない?ね、スモーカー君。」
「いちいち俺に振るな。」


チョコレートアイスを食べながらスモーカーは淡々と答える。だが、視線にはどこか気遣うような温かさがあって、ヒスイは慌てて笑顔を作った。


「お兄ちゃんが家を出たからちょっとナーバスなのかな?今まで近しい人と離れるって考えてみたらあんまりなかったから。」
「ああ、そうなの。…大丈夫よ、今は離れてたって通信手段や交通も整備されてるもの。会えるわよ、また直ぐに。」
「うん。ありがとう、ヒナ。そうだね。」


ヒナは大人だ。スモーカーも。二人といると、なんだか凄く甘やかされているような感覚に陥る時がある。自分もしっかりしなくては、ヒスイが勢いよくパフェをかき込むと、スモーカーは何も言わず最後に彼女の口元をナプキンで拭った。

***

「…スモーカー君、あのこ今日ちょっとおかしかったわね。」
「ああ、」
「まあヴェルゴに何かされたような感じはないから、思春期ってやつかしら。それにしてもあいつどんな顔であのこと兄妹やってんのかしらね?ヒナ、疑問。」


ヒスイと別れた後、二人も帰路に着きながら話を始めた。彼女に話してはいないが、二人も実は記憶を持ち得ている。ただ、ヒナは直接かつてのヒスイを知らないし、スモーカーも少年時代に海軍から拐われた少女に酷似していることしか情報はなかった。だが同じ名前で、ふわふわと笑う彼女を初めて見た時、スモーカーは目が離せなくなった。
今生は傍で彼女を見守っていけたら。
そう思いながら、年月を重ね、もう気付けば成人間近。早いものだ。過去に彼女が失踪した年齢はとうに越えた。ぼんやりしているとヒナが隣でにやりと笑う気配を感じ、スモーカーは顔をしかめた。


「漸くあのこも大人になるわね。それでいつ、プロポーズするの?」
「あ?」
「何、とぼけた声出してるのよ。どうせ貴方、これからもあのこをずっと見ていくつもりでしょう。さっさと告白していい加減モノにしときなさいよ。」


好きなんでしょ。
当たり前のように言い放つヒナにスモーカーは言葉を返せなかった。
――――――――――――
2017 04 06

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