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02再会


まさか自分の兄まで前世?の記憶があるとは思いもしなかった。ずっと一緒に生きてきたのにまさか彼がドフラミンゴの部下だったなんて信じられない。第一、兄はファミリーの中では見たことがない顔だった。一番、信頼出来るヤツだから潜入任務についてたんだよ、とドフラミンゴは軽く言ってのけたが彼女は心底、疑わしそうな顔をしたまま兄の背に隠れるよう移動した。


「お兄ちゃん…」
「ハァ?ヴェルゴ、お前、ヒスイにお兄ちゃんなんて呼ばせてんのか?」
「別に呼ばせてなどいないが。事実、兄だからな。」


さらりとした受け答えは今までと何ら変わりはない。それに少し安堵して彼女は余計にヴェルゴの背にくっついた。入学の式典は終わった。両親が来たらそっちにくっついてさっさと実家に帰ろう。ここが県外で良かった。再三、顔を会わせる事はない。冷や汗をかきながら彼女はヴェルゴを挟んで捕まえようと伸びてくるドフラミンゴの腕と格闘していた。


「ヒスイ、何がそんなに嫌なんだ。よく見ろ、ドフィはいい男だぞ。」
「お兄ちゃんがそうでも私は違うの!」

「あ、いたいた!兄上ー!」


兄上?
普通に生活していて滅多に聞かない呼称にヒスイはびく、と反応する。声のした方を見ると、ふわふわした金髪を揺らせて青年が此方に駆けてきた。もう少しという所で、彼は盛大に何もない場所で転ぶ。見知った姿より随分若いが間違いない。ヒスイはそれを見て後ずさると、パニックであわあわと言葉にならない驚きと共にドフラミンゴに視線をやった。
目が合うと意地の悪い笑みが返される。


「お、兄ちゃん…私、帰っ…!!」


油断した一瞬で、ドフラミンゴの腕はヒスイを捕まえ、自分の隣に引き摺るように寄せた。肩を抱かれて、無理矢理歩かされる。
やだ、会いたくない。突っ張って抵抗するが、力の差は歴然で無駄な努力だった。


「またやってんのか、ロシー。大丈夫か?まあ、いい。顔、上げろ。」
「いてて、…え?」


青年は座ったままドフラミンゴを見て、自然と彼の隣にいる少女を見た。言葉をなくして彼女に釘付けになる。不安そうな顔でドフラミンゴに肩を掴まれている彼女は生き別れた頃と違わぬ姿でロシナンテは夢心地で立ち上がった。


「ヒスイ…?」
「…」


立ち上がって恐る恐る頭に触れる。変わらない、懐かしい感触。ああ、彼女もこの世界で生まれかわっていたのか。無意識に嬉しくて笑みが溢れた。ヒスイはそれを見て眼を見開く。だって、前のロシナンテはこんな風に溶けるような顔で一度も笑わなかった。
赤い顔で俯く。何だか居たたまれなくて泣きそうになるとロシナンテは慌てた様子で手を離した。


「ご、ごめん!あれ…!あ、兄上、ヒスイなんだよね?なんか泣きそうなんだけど…!?」
「フッフッフ…、感動で感極まったんじゃねぇか?なぁ、」
「ドフィじゃなくロシナンテに感動するのか?理解出来ん…」
「うわっ…ヴェルゴ!!?」
「ヴェルゴ"さん"だ。全く…言っておくがロシナンテ、ヒスイはドフィ以外にはやらんぞ。」
「は?何であんたが。何の権利があってそんな事を?」
「俺は今、ヒスイの兄だ。」


混乱は続く。皆、勝手な事ばかり、と思う。このままではまずいと思った。兄がドフラミンゴに心酔している以上、本当に物みたく差し出されてしまうかもしれない。意を決して、ヒスイは顔をあげドフラミンゴを見る。


「あの。私…、好きなひとがいます。」


少しの牽制になってくれれば、と思った。だが、咄嗟に口に出して、後悔した。それまでニヒルな笑みを浮かべて機嫌良く佇んでいた元ファミリーのボス現大学一回生は凄まじい青筋を浮かべて怒りの表情に変わったのだった。
――――――――――
ドフィ、ヴェルゴ19歳
夢主、ロシナンテ17歳な設定。
次で書けるかな。

2017 03 31

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