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→脆く透明な殻に潜む(進撃*リヴァイ)


※↑と同じ同期主。


最初にその存在を認識し始めた頃、何の心配もない顔で、学校のブレザーを着たヒカルは笑っていた。ずっと昔、人類が安全な篭の中で安心しきっていた頃。彼女は平凡などこにでもいる少女だった。
時々、すれ違い様に目があっていた事など、きっと彼女は覚えていない。意味のない昔話などする気もないが。
ダウンタウンを根城としていた自分と、ヒカルは棲む世界が違ったのだ。

(…初めまして、リヴァイ。優秀な方だそうですね。)

初めてこちらに向けられた声は、以前見知っていた無邪気さはなくひやりとした美しさだけがあった。家族、友人。本来のヒカルを知る者はどれだけ残っているだろうか。
彼女が分厚い眼鏡で顔を隠すのは、感情で歪む目を悟られない為だと気付いている人間はいくばくもいない。命が簡単に失われるこの時代、彼女は泣く事も自ら断ったのだ。


「いー天気。暫く雨は降らないね。」
「だといいがな。」
「明日からまた壁外でしょう?」


何気ない会話の中、ヒカルは変わらない表情で笑う。薄い唇で咥えていた煙草をリヴァイの指が静かに奪った。以前は紫煙を燻らせる事もなかった。遠目に眺めた穏やかな優等生はもういない。前髪を指で掬い、リヴァイが唇を寄せると彼女は咄嗟に後退する。驚きを隠しきれない瞳。気分が良くなる。
誰にも壊せない、凍った防壁を自分だけがすり抜けた気がして。近くの壁に押し付けると、抵抗しかけたヒカルの唇を今度こそ奪った。


「……ん、ぅ!リっ…、……!」
「今だけでいい黙ってろ。」


腕の中で震える彼女に囁く。望むのは君。いつだって眼は彼女の事を追いかけるのに。
足りない。自分の口汚い言葉が移る程側に居ても。
こうして身体を求めてみても。

この手はまだ満たされる事を知らずにいた。


「…煙草なんざ似合わねぇんだよ、馬鹿。」


眩しかった君は、追憶の彼方。
リヴァイは細いうなじに顔を埋め肌を喰らった。
―――――――――――
2013 1113

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