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29偽りの仮面を片手に


膝を抱えて小さなソファーで身体を休める。アルビノの肌は異様な白さでヒスイリアは長袖の裾を引っ張った。
睡眠を取る時間を減らしても段々活動に支障はなくなってきた。後は、目的を実行するまで力を蓄えるだけだ。


「……やはり、本調子ではなさそうですね。」
「…!」


いつのまにか傍に来ていたケット・シーに内心驚く。油断していたとはいえ、そこまで鈍ってはいないつもりだ。しかしそこで気づく。彼は生き物ではない。ケット・シーは機械で、気配も何もないのだという事に。


「お久し振りです、リーブさん…」
「ええ、本当に。本社では残念ながらお会いする機会がありませんでしたね。」


タークスと行動していた時から、彼がクラウド達の動向を神羅サイドに流していたのは知っていた。穏健派の彼らしからぬ行動に思えたが、どうやら認識は少し違ったようだ。彼は彼の正義の元、動いている。


「レノ君が随分、荒れていましたよ。今は大分、落ち着いたようですが。」
「……そうですか。」
「君次第ですが、彼には無事を伝えてあげても」

「リーブさん、」


リーブの言葉を遮って、ヒスイリアは静かに首を横に振る。悲しげな瞳の奥に潜む心を汲み取る事は出来ず、ケット・シーは黙って彼女に寄り添った。


「私はもう、神羅の駒じゃない。あちらに戻るつもりはありません。」
「彼は君を人として見ています。…大切な友人だと君が一番解っているのでは?」
「…」
「出過ぎた真似は承知しています。君ももう立派な大人の女性だ。けれど私はとても嬉しかったものでね。君が生きていて、本当に良かったと思えたものですから。」
「…ありがとう。……考えておきます。」
「……。次の艇の行き先はジュノン海底魔晄炉です。あそこが最後のヒュージマテリア回収地点。既に軍は動いているようです。」
「…分かりました。着陸したら、私が先導してジュノン基地に潜入します。」


肩に掛けた毛布を被って、ヒスイリアは顔を伏せる。ケット・シーが出ていく音に耳を澄ませて彼女は静かに目を閉じた。
もう、他人と寄り添う必要はない。北の果てまで追い掛けてきてくれた、それだけでもう、レノからもらった気持ちは充分だった。

(……優しい悪役は、私には要らない。)

それでも全部終わって少しだけ彼の顔が見て謝れたら。
頭に浮かぶのは、人懐こい笑みを浮かべた彼の姿だった。
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2014 02 24再UP
一部改訂。


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