「相変わらず、悪趣味な部屋。」

しししっとまた、ベルフェゴールは特徴的な笑い声を上げる。うつらうつら、としていたが部屋に意識を向けると、確かに。ホルマリン付けの男の標本。しかも、綺麗な肉体ばかりが集められているような気がする。あ、しっかりプラスティネーションされているものもある。というか、むしろ大丈夫なのだろうか。この部屋に行くよりも医務室の方がいいのではいか。

私は、違う意味で意識を飛ばしそうになった。



「あら、ベルちゃん」

奥の部屋から、がたいのいいそっちの人が来た。あ、そっちの人。あ、そうか。そうだよね、暗殺部隊にだって居るよね。一人で納得することにした。そうしているうちにベルフェゴールは、私をソファに座らせ、足を机の上にのせる。心臓よりも低くなった今、血が溢れるように流れ始めた。あれ、止血してたのに。



「どうしたのよ、これ」
「こいつが勝手に自爆したんだよ」
「まぁ、本当に。あらあら、この子…ボスのお気に入りの子じゃあない」

ボスのお気に入り、と聞き私は耳を疑った。だって、それって。初めて会ったあの顔だけで人を殺すのではないかと思ってしまうほどの人物XANXUSのことを言っているのではないか。そいつのお気に入りって、どういうことだ。私は、別に何もしていないはずだ。
彼はしかたがないわねー、なんて言いながら私の太ももの方をタオルで強めに縛り上げ止血する。ベルフェゴールも彼の部屋の勝手が分かっているようでバスタオルやらなにやらを持って来て血たまりから足を持ち上げタオルで高さを調節していた。




「さっさと、治してくんない」
「ベルちゃんがこう言うなんてねぇ」

あなた、なんかしたかしら。そう、彼は私を牽制するように、攻撃するように、見極めるように、私を見つめた。
私自身は何もしたつもりはない。ただベルフェゴールの前でボロをだしてスキを見せてしまっただけだ。めんどくさいことになってしまったようだ。

やはり、振り切ってでも医務室に行くべきだっただろうか。




「まぁいいわ、治してあげるからおとなしくしていて」

彼は、指にリングをつけて火を灯す。そして何やら匣にリングを差し込んで、開く。きらきらと、暖かい光を放つクジャクが飛び出てくる、なんだこれは。私、こんなの知らない。傷が見る見るうちに良くなっていく。血はすでに止まっていて、少しずつ傷口が埋まっていく感覚がした。



「もしかして、見えてる?」
「その人みたいなののこと?」
「これ、あ…あれ。あー…これはスタンド」
「何、スタンド…って、」

私は何故か、スタンドを発現させていたようだった。彼は、私の後ろに目線を向けて驚いたような顔で居るものだから、不思議に思って後ろを振り返ってみれば、マドンナがふよふよと浮いていた。さっきの、視線に対して私も牽制の気でいつものようにスタンドを発現させてしまった。気がつかなかった…無意識で出してしまった。彼は、私の背後を見ている。驚いた顔つきで。あれ、これ。マドンナが見えているの。何故、彼が見えているの。他の人たちは見えていなかったはずだ。その証拠にベルフェゴールは見えていないようで、怪訝な顔をして彼を見ている。



「あなた、それ」
「私のマドンナ、見えるの?」

もう一度聞いた。疑問は、確信に変わった。驚いた。しっかりと、見えているようだ。マドンナは私の肩に手を伸ばし、私はマドンナのあごに手を伸ばす。頭をなでるように。

マドンナも私に近づいて。




「そうよ、これが私のスタンド。マドンナ」

人型のスタンド。
本体の色は、えんじ色をした女の形のスタンドで口以外の部分がマスクのようなもので隠れていて、お腹には時計の針のようなものが埋め込まれている。小さい頃から一緒にいる、私の半身。しかし、彼が見えるということは彼はスタンド能力を発現できるか既にスタンドを持っているかになる。



「でも、どうして見えるの」
「あら、私もこんなのは初めてよ。何故かしら」
「えー王子も見たいんだけど」

何故だ、スタンド使いだと言うのか。それとも、私がトリガーになってスタンドが発現したの、か。そういう葛藤をしていると、私の足は綺麗になっていた。彼も、治った傷を見てオレンジ色のクジャクを仕舞う。





「あら、見えなくなっちゃった」
「は、え、え?」

彼は、クジャクをしまったとたんスタンドが見えなくなった。私は益々混乱してしまいそうだった。ついでに言うとこのホルマリンの香りも気持ち悪さが増してしまう。隣に居たベルフェゴールは、何か考え込むような顔付きをしてあ、と何か閃いたようで自分の指にしているリングに火を灯す




「あ、俺も見える」
「え、マドンナを?」
「ししし、こいつはぁたまげた」

すっげーな。触れねーんだ。と言って手を伸ばしても、触る事ができない。スタンドはスタンド同士でしか触り合えないのだから無理な話だ。ベルフェゴールはこの一瞬で、死ぬ気の炎を灯すことでスタンドを確認することができる、という結論を出した。しかし、スタンドは精神の具現化。スタンドが見えるということは、スタンド使いになれる素質を持つということになる。死ぬ気の炎を鎮めれば、また見えなくなる。



「もしかして、死ぬ気の炎、かしら」
「ピンポーン、正解〜」

彼も、ベルフェゴールの行動からスタンドの見える条件を出した。やった、正解だわ、なんて別にいいが、なんだこのノリは。二人が勝手に話を進めるせいで、私はどんどん分からなくなってしまった。置いてけぼり反対。そうしているとベルフェゴールはため息をついて、死ぬ気の炎について説明しだした。
死ぬ気の炎とは、自分の体の中に流れている精神エネルギーのようなものだそうだ。なんともスタンドと似ている、ということだろうか。彼らに矢をさせば、彼らはスタンドも使う事ができるようになるのか。もしかしたら、自然にスタンドを発生させることができるのか。疑問は深まるばかり。




「私たちは死ぬ気の炎なんて、存在知らない」
「俺たちだって、スタンドなんて知らない。お前が来るまで聞いた事なかったぜ。ししし」
「こんなもの、初めて見たわよ〜」

何故、同じイタリアンマフィアのはず。
場所は違えど、そこまでしきたりなど変わらないはずだ。それにボンゴレは、かなり古いギャングだということは皆が知っている事だ。だからこそ、彼らがスタンドを知らないことに驚きを隠せなかった。一度、SPW財団に連絡を入れてみた方がいいかな。





「とりあえず、幹部様様は私の事はくれぐれも、内密で」
「王子の、暇つぶしにつきあってくれるならね」
「えー!ベルちゃん、私も私も〜」

しょうじきめんどくさいから医務室行くのが正解だったと思う。






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