気がつけば、火の気のくすぶる村に立っていた。 私は泥と血にまみれたツギハギの時代錯誤な簡易衣を着て、小さくて細い手足を持つ子供になっていた。 ・・・すぐに気づいた。 ここはあの少年霊が生きていた世界なのだと、この体はあの少年霊の遺体なのだと、私の魂はあの少年霊に引きずられて時間と空間を越えたのだと。 “にんじゅつがくえんにいきたい” それは私をこの世界に引きずり込み、己の冷たい肉体に閉じ込めた少年の最期の望みだった。 別段忍者への憧れはなかったらしい。 ただ、少年の将来を想った両親が一生懸命にお金をかき集めて入学届けを出したらしい。 少年は両親が大好きで、両親の想いに応えたかった。 だからこそ、最期の最期に少年が強く願ったのは“忍術学園に行きたい”というものだった。 私は少年の願いを叶える義務がある。 ・・・・・・・いや、叶えたかった。 面倒は嫌いだと、騒動は嫌いだと、ずっと公言していた。 それでも、縋りついてくる手を払いのけるほど私は非情にはなりきれない。 何より、私自ら関わっていったものの責任は私が取るべきだろう? お人好しだと馬鹿にされようが、呆れられようが、今更だ。 手を差し伸べたのは私。 だから、私のように非現実的で非科学的な霊能力のある人間が、極めて現実的で科学的な忍術を習うなんて専門が違うとわかっていても、頑張ろうと決めた。 少年が成仏するためには、少年が自分と重ね合わすことの出来る良い思い出を作る必要があると思ったから。 たくさん勉強しよう、たくさん遊んであげよう、友達をたくさん作ろう。 たとえこの世界がかつてブラウン管越しに観ていた【忍たま乱太郎】の世界であっても、この世界が少年の生きてきた世界なのだから仕方ない。 出来るだけ面倒事には関わりたくないがな! …mark?・back?… |