榊原女史の決断【い】












 忍たまの誰も知らない話をしよう。



 現代において“怪談スポット”として広く知れ渡っていることだが、“学校”は霊的なモノに非常に好まれる場所である。


 そもそも、何らかの“いわく”を付けなくとも、人の集まる場所には人成らざるモノたちも集まる。


 彼らは陰気の塊であるため、人の持つ陽気に自然と惹き寄せられてしまうのだ。


 つまり、人の生において最も陽気が強まる十代の多感な少年少女が集まる“学校”は、彼らにとって魅力的且つ居心地の良い場所だった。



 よって、




(私は陰陽師でも外法師でも僧侶でも山伏でもなんでもないのに、忍術学園の生徒たちを狙う妖怪・悪霊の類と戦わなければいけないんだ・・・・・・・・・・・・独りで




 最高学年ともなると、普段の実技・教科のみならず学園の警備やプロ忍に近い忍務も数をこなさなければならない。

 加えて、学年が上がるにつれて実家の都合や心理的、または生死の問題で人数が減っていくため、六年生のほとんどが何らかの委員会で長を務める結果となる。

 むしろ慢性的な上級生不足からくる委員会運営の滞りを解消させるため、よほどの理由が無ければ委員会所属は半強制となっている程だ。

 そしてその数少ない無所属六年生である“榊原倫太郎(15)”の持つ“よほどの理由”というのが



――妖怪・悪霊退治。



 何せ、その方面に対処出来る人物が教員生徒を含めて誰もいないのだから、特別扱いされるのも当たり前だ。



(おかげさまで、奇妙な事件事故が勃発すれば寝ていようが風呂入っていようが出動だ。原因がそっち関係ではないとわかった時の殺意はどこに向ければ良いのだろうな・・・・



 言っておくが、私は現代においても陰陽師でも魔術師でも僧侶でも牧師でもなんでもない女子大生だったんだ!

 ただちょっと霊感が強くて、ちょっと霊力も強くて、ちょっと興味本位で買った本に書かれていたことをやってみたら妖怪消滅・悪霊退散してしまっただけなんだ!

 それなのに学園長に見つかってしまったら最後、『それっぽい事件事故は私へ』なのだぞ! いい迷惑だ!

 昨晩もそれで出動させられて学園に帰りついたのが三時過ぎ、顔洗って着替えて教材道具持ったら、教室に直行してようやく睡眠だ。

 私には潮江のようにギンギンに隈を作る趣味はないからな、朝食抜いてでも寝る!



(一年の後期辺りからずっとだ・・・・・・慢性的上級生不足が何だ。委員会は忙しい忙しいと言うが、学業に支障が出ない程度に調節できるんだからいいじゃないか。私なんて常に死が隣合わせなんだぞ・・・・・・・・くそっ、眠いッッ!!!!


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