榊原女史の不運【い】













 『光陰矢の如し』とはよく言ったもので、忍術学園に入学して今年で六年目になる。


 そう、忍術学園に留まれる最後の年。



・・・いやはや人生何が起こるかわからないとはよく言ったものだが、まさか男に間違われたのをきっかけに、そのままずるずる六年も忍たまするとは思わなかった。

 学園長の思いつきに笑ったのは懐かしい思い出だ。

 私の男装に全く気付かなかった先輩同輩後輩たちに笑えばいいのか心配すればいいのか悲しめばいいのか・・・。


 いや気づけ、未来のプロ忍ども。

 今のところ、事前に知らせた人たち以外で気づいた様子のある生徒を見たことがないんだが・・・?



「そんなに私は女らしさが無いか?」


《色葉って、普通の男より男前なところがあるからねー》


(・・・・・・そこは是非とも「違うよ! 色葉の隠身の術がすごいだけだよ!」とフォロー入れて欲しかったな。倫太郎・・・)



 倫太郎の迷いの無さ過ぎる返答にがっくりと肩を落として、私は深々と溜息を吐いた。


 私は心身共に女だ。

 それは倫太郎の体に憑依した瞬間、男体が女体に変化したことからも明らか。

 だからこそ私は、自身の男装がバレ無いようにと隠身の術を自分自身に施して、周りが“男”に見えるようにフェルターをかけた。

 しかし、そのフェルターのおかげと言い切るには違和感があるくらい、周りの態度は自然過ぎた。

 彼らの「忍たま教室に男がいるわけがない」という先入観が強いせいだとしたら忍として危ういが、私があまりに女らしくないのだと考えると非常に納得がいく。

 何故なら、私が“女”だと知っているはずの先生方や上級生のくの一たちでさえ、時々男扱いや無茶っぷりを発揮してくれるからな・・・。




 そう例えば、




「――というわけで、くの一教室の屋根の修理お願いね」


「・・・・・わかった・・・・」





 女の手では余る修理や運搬といった男仕事が私に任せられているところ。




 いや、頼まれた以上はやるぞ? やるとも。

 彼女たちの白くて細くてすべすべの手を傷つけたくないし、お風呂や月のものの時に大変お世話になっているし、純粋な力は男子に劣っているが女子にしては力持ちだからな。

 一年の頃からそういった雑用を任されてきたから、屋根や壁の修理や襖や障子の張り替え、部屋の模様替えのために箪笥の移動、棚や小箱の製作etc・・・と地味にスキル積んでいるしな。



 くのたま怖い。


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