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【それは一体幸か不幸か? 06 】






 気づけば9時を回っていて、おれは慌てて喫茶店を出た。

 見送りに店前まで出て来てくれたマスターに頭を下げて、一緒に店を出たリボーン(何故か名前を呼び合う仲に)と途中で別れて暗い夜道を足早に歩く。

 帰りが遅いからって叱るような人間はいないけど、夜の見回り中の風紀委員長に見つかったら咬み殺されることは確実。


(幸いに一度も見つけられたことは無いけど、咬み殺された連中なら何度か見たし・・・・!)


 そして、放置する委員長の代わりに救急車呼んだことも何度かあります。

 なんでおれの通学路にごろごろと!


 いつもならアパートで明日の弁当の準備をしている頃なのに、リボーンとの会話に夢中になって時間を忘れていた自分のうっかり加減が恨めしい。

・・・・まさかコーヒー豆の話でリボーンと意気投合するとは思わなかったんだよ。

 いや、リボーンがコーヒー通なのはなんとなくわかっていたけどさ、おれと同じエスプレッソ好きとは・・・。


(是非とも、もっと上手くなった暁にはまたおれのコーヒー飲んでもらいたい・・・・)


 冬幸はコーヒーどころか紅茶さえ一滴も飲めないお子様舌だから、コーヒーで語り合える日は一生来ない。

 身内で唯一の望みは妙に舌が肥えてる満幸だけど―――そうか、なんか既視感があると思えばリボーンって満幸に似てるんだよな。


 赤ん坊の頃から口達者なところといい、常識はずれな身体能力といい、規格外な存在感といい。

 かつて生後三ヶ月の満幸が「ぼく、かみさまのうまれかわりなんだよ」と言ったように「オレはヒットマンだぞ」とリボーンに言われても、おれ驚けないな。



 ただしビビリだから心拍数はダダ上がりだろうが。



「あ! 帰ってきたびょん!」


「おや、本当ですね」


「・・・・遅い・・・」


 闇の中から響いた声に思わず足を止めて、それが聞こえた方向、アパート前の濃い影を凝視する。

 おれの周りには野良猫の一匹も歩いていないし、声を上げた主たちはおれに向かって歩いて来ているようだから、人違いでも生き物違いでもあるはずがない。

 おれは夜道を歩いたおかげで暗闇に慣れた目を凝らして、相手の姿を確認した。

 予想外でも何でもないから、誰かわかってもおれは驚かなかった。



「城島、六道、柿本。こんな時間にどうした?」



 闇から浮かび上がるように現れた黒曜中生たちに、おれは疑問を投げかけた。


 おれが隣町の中学生と知り合いなのは、決しておかしいことじゃない。

 何故ならおれが住んでいるアパートが並盛町と黒曜町の境に建っていて、ご近所には並盛中生と黒曜中生が入り混じって住んでいるから。

 だから初めてこいつらに会った時も、特に疑問を感じず話しかけた。


 空腹でふらふらしている城島を捕まえて。


 そして飯食わせたり飯食わせたり飯食わせたりしているうちに柿本や六道とも知り合い、なんやかんやと交流は続いている。




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