暗闇と熱と鎖











「ところで君は、どうしてそんなつまらなさそうな顔をしているんだい」

格調高い家具の並んだ、仄暗い部屋で二人きり。
向かい合わせに座るソファーは、小さなテーブルを間に挟むだけで、さして距離はない。

「…あなたに言われたくはないわ」

「ふふ、プライドの高いお嬢さんだ」

「それ、口癖? この間も言ってたじゃない」

「それは悪かったな。記憶にない」

「そう。あまり退屈させないでちょうだい」

「重ねてお詫びしよう」

そういって笑い、そっと彼はマリーの手を取った。
謝罪の意味を込め、優しく口づける。

く、と彼女の指が反応した。

「…たかだか挨拶のつもりだったが、不愉快か?」

デスコールは苦笑に似た笑みを浮かべた。
マリーはふるふると首を振るも、手を引っ込めてしまった。

仄明かりの中、目元が赤く熱を持って浮かび上がっている。

「……恥じらっているのか?」

「…馬鹿を言わないで。なんでたかだか挨拶なんかで」

「では、その赤は?」

「暑いのよこの部屋が。いまどき蝋燭なんて…」

「では消そう」

彼はマントをはためかせた。
テーブルの上の蝋燭が明かりとしての能力を失う。

「これで少しは涼しくなったろう」

「…」

「暗いところは苦手かい?」

「まさか」

「声が震えているよ」

ひんやりと冷たい指が、不意にマリーの頬に触れた。

「っ」

「本当に熱いな。熱でもあるのか?」

「あ、もういいから、」

「君に熱を出させてしまったとなれば、君の父親になんと咎められることか」

「あなたのせいじゃないわ」

「それはそれで腹立たしいな。君にこれだけの熱を与える者が私以外に存在するとは――」

「あ、あなた何言って、ッ」

「悪いがもう少し熱を上げてもらう」

デスコールはソファーの上に彼女を押し倒した。

「は、離しなさいよ!」

「私に見えてないとでも思っているのか? その熟れた林檎のような顔色が」

「あなたが寄ってくるから、暑いだけよ!」

「そうか。それならその上着を脱いでしまえばいい」

「い、嫌、ちょっと…!」

彼は、彼女が羽織っていたファー付きの高級コートを、丁寧かつ手慣れた動きで取り去った。

その下に纏っていたのは、ピンクのレースがついた黒のブラウスと、同系のミニスカートだった。
もっとも、光の消えた部屋の中では、色彩などほとんど意味をなさないが。

「暑がりなお嬢様も、これで満足していただけたかな?」

鼻先が触れそうなくらい、距離を縮めるデスコール。
マリーは身構え、緊張した光を瞳に宿した。

「ああ、そんな顔をしないでおくれ。マリー」

安心させるように、彼はマリーの名を呼び、頭を撫でた。

「"熱い"んだろう? このままでは眠れない。お互いにね」

彼の口元が、獲物を手にした獣のような笑みを描いた。
仮面の奥底に、優しく強く野蛮な光が宿った気がした。

「そ、な、この間のは、ただの気まぐれじゃ…」

マリーの声が掠れる。

「この間? …覚えていてくださったなど光栄だ」

「忘れられる訳…――!」

「なにぶん君は慣れすぎていて、たった一度のことなど忘れてしまうだろうと思っていた」

囁く彼の熱が、鼓膜を震わす。

「もう退屈はさせない」

デスコールが軽く首をかしげ、マリーは緊張と不安と期待の入り交じった瞳をふっと閉ざした。

唇が重なる。

理性は暗闇に融け、部屋の温度は上昇を続ける。







Fin.




デスコ夢! うわぁキャラ崩壊どうしてくれよう!
今回は大人なデスコさんで。可愛いのも好きだけど今回はシリアスで。
あの美声を想像してください。あの声だと思って読んでいただけると嬉しいです。
ちなみに部屋は、魔神の笛のあの部屋と思ってくださったら良いかと思います。あんな感じの部屋です。文章力ないです。

お目汚し失礼しましたoyz


2011.6.20

Back To Professor Layton







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -