仮面は恋に濡れた











「君が嫌いだ、マリー」

「ええ私も嫌いよ」


白のティーカップの縁に口づけし、カップを傾ける。
刹那、舌を、喉を焼く、甘すぎる激痛。


「…―――ッッ!?」


白い陶器は大理石の床へ落ち、白い破片と琥珀色の紅茶を振りまく。

その細く繊細な指はテーブルの端をつかみ、美しい肢体は椅子から崩れ落ちる。


「…なっ…に、を…!?」


胸元を押さえ、彼女は激しく咳き込んだ。

口元からしたたる、血。


視野狭窄が始まる。呼吸も少しずつ浅くなっていく。


「ど、して…――」


涙にかすれた声を残し、テーブルの縁をつかんだ指が、すっと彼の視界から外れた。





「どうして、だって?」

床に零れた紅茶を踏みしめ、クククッと仮面の男は笑った。

「それは君がどうしようもなく愚かだったからだ。マリー」

ダークブラウンの髪は、白い彼女の頬に張り付き、死の影を映していた。

彼はかがみ込み、その髪を整えてやる。
体を仰向きに寝かせ、手を胸の前で組ませる。

その姿はさながら、ガラスの棺に眠る白雪姫。

「ああ、君は美しい。だが」

彼は彼女の頬にキスを落とし、不敵に笑った。

「罪と罰とは同時に存在せねばならない。罪には罰を、だ」

その執行人が私だっただけのこと。

「餞(はなむけ)に、罪状を教えてやろう」

彼は冷たいその体の耳元に口を寄せ、


「君が《マリー》であったことだよ」


その冷たい手に、自らの手を絡ませた。

「楽しかったよ、マリー。君との談笑は。だからこそ君はいまここで横たわっている」

楽しすぎたのだ。そう、罪となるほどに。

「さらばだマリー。…マリー…そうか、君の名前を呼ぶこともなくなるな」

彼は立ち上がり、帽子を胸の前に当て、うっすらと笑みをはいたまま、
最後の言葉を贈った。

「マリー、どうやら君を、愛していたようだ」

滑稽な話だがな。

仮面の男は自分を嘲笑し、帽子を被り直してその場を後にした。



彼女の閉じたまぶたから、一粒、涙がこぼれ落ちた。



「私も愛してたわ。デスコール――…」

かすれた声で、言葉を紡ぐ。

「聞きたくなかった…」

涙は次から次へとあふれ出す。

「どうして、殺してくれなかったの…? ねえ、」

彼女はこのまま目が覚めなければいいのにと、涙を流して願った。


彼が戻らないならばいっそ、
永遠の孤独が欲しい。



(繊細で透明で恐ろしいガラスのように)
(彼女は泣いた)



Fin.




youtubeにて、逆転裁判の「ゴドーのくしゃみ」を見て
猛烈に書きたくなった結果です…。
お目汚しすみませんoyz

ヤンデレ? ヤンデレなのでしょうか?←
RADの「へっくしゅん」が頭から離れません…><

夢主が飲んだのは毒入りの紅茶です(見れば分かる
「私も嫌いよ」は彼の想定内でした。ああ言えばこう言う。

でも書いてて辛くなりました((
次にデスコ夢を書くときは、これより過去の時系列で書きたいと思います。
※2012.3.21追記
やっぱりこの物語が先に待っていると思うと、甘い夢を書きづらいというのもあり、
これはパラレル扱いにしました。
いわゆる黒歴史です。本当にごめんなさい。パラレルとして楽しんでいただければ幸いです。


2011.8.13



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