弐
急に体が傾くのを感じて零崎天識はとっさに受身をとる体勢をとった。
けれど地面にぶつかる前に誰かが支えてくれて倒れることはなかった。
オレ何してた?
状況が判断出来なくて頭が混乱する。
「やっぱりどこか悪いんじゃないすか!?」
聞き覚えのない、だがしかし心配そうな声が聞こえて、体を支えてくれている人間だと気づき、けれど覚えのない気配の相手なので離れた。
「サンキュー。ついでにここどこ?」
軽くお礼して、場所を訊ねると驚かれた。
さっきオレを支えてくれたのは銀髪の少年で、短髪で黒髪の少年と死んだ目の茶髪の少年の三人組らしい。
「おいおい何言ってるのな」
まるでオレがこの場所を当然知っているかのような言葉に聞こえた。
口調の気軽さと勘からこの少年達はオレのことを知っているみたいに感じた。
でも、三人ともオレの記憶にはない。
「誰?」
呟くと先程よりも強く驚かれた。
何故?
ひとまず放ってもう一人この場にいる、今度はよく知る人物でありオレの家族の方を向けばようやくかとばかりにかははと笑みを浮かべられた。
「よお。天識にいーちゃんじゃん。二人とも知り合いだったわけ?」
「ああ久しぶりだな人識にーさん。つーか、いーちゃんって誰よ?」
「あり?顔見知りじゃねーの?そいつと。『欠陥製品』、いや『戯言使い』って言えば知ってるか?」
言って人識は茶髪の少年を指差す。
いーちゃんと言われてもピンとこなかったけれど戯言使いと言葉にされたことで思い出した。
「じゃああんたが腹切りマゾなんだ」
「…そうだけど。ねぇちょっと君の名を聞いてもいいかい?」
「零崎天識」
名を告げると戯言使いはため息をついた。
「これこそ傑作だよ」
と、一人何かを悟ったように彼は呟いた。
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