相反する立場 | ナノ




16

マイク付きのイヤホンのコードを携帯に取り付たランボはパソコンの送信しましたの言葉を見て口を開く。

「着いた?」
『おー、バッチシ。サンキューなランボ。んじゃこれは科学班に回しとくから』
「任せますよ、ボンゴレ」
「うんうん任されてよ」

電話の相手はボンゴレ十代目こと沢田綱吉だ。

今ランボは任務一日目の報告と成果の送付を行なっていた。

そして促されるままに朝からのことを話していたのだが、全て終わった後に綱吉は何とも言えない顔を見せた。

「どうかしたんですか?ボンゴレ」
『どうかした?じゃなくてさ、ランボってばなんで工藤新一君達にマフィアって伝えちゃったわけ?』
「だってボンゴレ工藤新一は頭脳明晰だから気をつけろって言ってたじゃないですか。だから俺は奴の度肝を抜いてやろうと……。それにいっそ話した方が信憑性がないだろうって思ったんだもんね」

かつて自分が守護者になった頃やその前、綱吉達は学校で様々な事件を起こしまくっていたことを、といっても大抵犯人はリボーンだが、覚えている。

それに高校生になった現在でも自分はマフィアのボスだと公言しているロンシャンだって、それでも周りから線を引かれることなく信じてもらえることなく過ごしている。

ありえないことを公言しているのは遊びだから、嘘だから、法螺だから、そう認識してしまうのが人間だ。

ランボはそれを利用しようと思ったのだ。

最も既にあった危険のせいでフランが使った幻覚を見せてしまったせいで、かなり疑われているだろう。

「まぁいいや。他に何かある?」

呆れたように綱吉はため息をついてランボに先を促す。

「そういえば、例の銀行にうちの幻術士がいたんだもんね。なんで?」

その何か言いたげな態度に文句を言おうとして、けれど確認しときたいことを思い出してそれを口にする。

あの時同じ銀行にいた幻術士のことだ。

おそらくあれはボンゴレファミリーの一員だ。

「ん、ああ。あれね。餌というか囮捜査ってやつ。仇を討ちたいって張り切ってたから頼んじゃった」

綱吉ならば知っているかもしれないと思っての質問だったが、やはり知っていたらしい。

あっさりと買い物を頼んだといった気楽さを感じさせるような綱吉の口調に、心配や迷いの気配を読み取ったのは付き合いの長さ故である。

確か、綱吉が関わったという黒の組織による殺人事件の被害者はボンゴレの構成員の知り合いだとか聞いている。

それが、あの時の幻術士だったということだろう。

「あの頬に怪我をした男は誰なんだもんね?」

綱吉は囮だと言った。

つまり、あの幻覚で作り出した男には黒の組織が思わず食いつくような理由があるということだ。

「FBIだよ。名前は赤井秀一。頭が切れる人間で、奴等から随分と敵視されてるらしい。殺されかけてたところに偶然居合わせてね。今は別人として過ごしてる。もちろん奴等は死んだと思い込んでいる。死んだ人間がいたら不思議だろ?」
「そういうことなのか」
「ところで工藤君は『赤井秀一』に気付いた?」
「いや、二人って知り合いなの?」
「らしいね。元々工藤君に目をつけた理由だって彼から話を聞いたってのもあるし」

偶然か否かあの銀行にはFBIの人間がいて、江戸川コナンとは知り合いだった。

それだけでなく父親はインターポールにツテがあるらしいことも、警察に何人も知り合いがいることは調べがついている。

それでも、あの時コナンは銀行強盗に気をとられていたし、幻覚なんてものを見てしまいそれどころではなかったようだった。

「やっぱり工藤新一は気づいてなかったんだもんね」
「そう。とにかく接触した直後に銀行強盗に巻き込まれたことといい、彼は俺以上に巻き込まれやすい、それも質が悪いことに殺人事件に出くわす確率が高い体質だそうだからくれぐれも気をつけてね」

通信の切れた機械の前で、これからを思いランボは子供らしからぬ表情を見せてやれやれと呟いた。



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