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《side Mafiaboys》
帰りたいなと思った。
休み時間の度に質問攻めにされて隣のフランは当てにならないから余計にランボは疲れる。
ようやく昼休みに江戸川コナンの計らいで解放され……たかと思えば、少年探偵団に囲まれた。
そもそもの元凶を思い出してもため息しかでない。
『じゃあ二人とも、江戸川コナン及び灰原哀の護衛は任せたよ』
『はーい』
『了解、だもんねー』
ツナの言葉に元気に返事したのはフランで、ひきつった返事をしたのがランボだ。
江戸川コナンというのは名探偵毛利小五郎の家の居候、灰原哀は阿笠博士というジャンニーイチの知り合いの家の居候らしい。
二人がツナに頼まれたのはある案件が片付くまでの彼らの護衛。
特に江戸川コナンはしょっちゅう様々な事件に巻き込まれるから嫌がおうにも経験になるだろうとのこと。
そして、正真正銘の子供であるフランと違い、ある事情により精神と肉体の年齢が違うランボはこの護衛についてもっと深い事情も聞かされていた。
曰く、江戸川コナンも灰原哀も本当は小学生ではなくおそらくアポトキシン4869という毒薬により幼児化していると。
曰く、江戸川コナンの正体は高校生探偵の工藤新一であり、灰原哀の正体は黒の組織の元一員であること。
曰く、ランボ達の任務は護衛より監視の意味合いがあるということ。
曰く、フランもランボに同行するのは任務に行きたいと以前から駄々こねられていたためであり、あくまでランボ達は身近な護衛であり他にも護衛を付けるしそこまで危険なこともないだろうからとのこと。
つまり、ランボはフランのお守りを任された訳で任務と銘打ってある以上断る訳にもいかなかったのである。
「ミーたちに何の用ですかー?」
フランは不思議そうに首を傾げているがランボは分かった。
朝、あんな気になる風に声をかけたからだ。
わざわざ聞くのは興味があるからと思われるのは当然だ。
「ねぇ何か依頼あるの?」
「なあどうなんだよ?」
キラキラと嬉しそうに訊ねてきた少女が確か吉田歩美で期待いっぱいに訊ねてきた少年が小嶋元太だったはず。
どうやら依頼事があるから少年探偵団について聞かれたのだと判断したらしい。
「ないんだもんね」
「え〜、そうなんですかぁ?がっかりです」
「だったら本当に新聞見ただけなのかしら?」
「それも違いますねー」
ないと言えば分かるほど気落ちしたらしい円谷光彦をはじめとした江戸川コナンと灰原哀以外の三人の反応にランボは少しだけ申し訳なく思ってしまった。
そして、灰原哀が念を押すように言葉にしたことを否定したフランの言葉にまた三人はわくわくとした顔を見せる。
余計なことまでは言うなよとランボはフランに目配せしてからあらかじめ打ち合わせていた説明を口にする。
「俺たちはマフィアなんだもんね!」
予想外過ぎる返答に驚いている少年探偵団の五人の混乱が解けるのを待たずに次のセリフを続ける。
「今は修行中で、ボスに帝丹小学校の少年探偵団を護衛しろって任務を任されたんだ」
「そーゆー訳なんでー、しばらく一緒に行動しますー」
流石と言うべきか最初に驚きを理解し質問してきたのはコナンだった。
「マフィアって意味が分かって言っているのか?」
その声色からマフィアイコール悪と結びつけているのだと伝わってきた。
そして同時に彼はランボやフランが本当にマフィアだと信じてはおらず、子供の戯言やごっこ遊びだと考えてたのだということも。
敢えてランボはにっこり笑う。
「分かってるよ。当然だもんね」
「駄目だよ。マフィアって犯罪者でしょ」
「そーです。麻薬とか殺人とかはいけないんですよ!」
「んなことしてたら母ちゃんに怒られるんだぞ」
「中途半端な知識で貶されたくない」
歩美に光彦に元太が口々に非難するのをそれまでと対照的に明るさを感じさせない静かな声でピシャリと言えば、三人は口をつぐむ。
続いて不機嫌そうにむしろ軽く殺気を込めてフランが言う。
「腐った馬鹿供と一緒にされるのは不愉快ですー」
「フラン」
「いいだろ別にこんくらい」
「よくない」
フランはあの六道骸の弟子だ。
例え軽くだろうが一般人の、それも子供に殺気を向けて相手が怯えないはずがない。
現にコナンや哀以外の三人が縮こまって今にも泣きそうになっていた。
しぶしぶと殺気は納めたものの反省をしそうにないフランを傍目にランボは仕方なしにマフィアのフォローをする。
「俺たちが所属するのは元々町の自警団だったんだ。イタリアは日本よかずっと治安が悪いからな。実際にマフィアに感謝している住民も数多い。一つを見て全てを判断してなんかほしくないんだもんね」
「なんでーそうやって文句を言われる覚えはないですー」
「「「ごめんなさい」」」
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