相反する立場 | ナノ




14

《side Mafia》


「囮に食いついてくれなかったみたいだね」

「はは。そうなんですよ。せっかく恭弥の親戚にまで手を貸してもらったっていうのにな」

「君が、相手を買いかぶりすぎたんでしょ」

「のかなぁ。ま、それはついでだし、“沢田綱吉”がボンゴレボスだと知らないのか知ってて接触のチャンスを見逃したのかなんて大した差じゃないよな」


目の前にいるこの部屋の主は長い付き合いだからこそ分かる笑みを浮かべた。

彼の、綱吉のこの笑顔はあまり好きじゃないなと雲雀は心の中で呟きその原因を指摘する。


「例の保護するんじゃなかったんだ?」

「ああ断られた。けじめだってさ」

「あっそ。それで桜井いないんだ」

「葬式に出てるみたいだ。俺は行くわけにも行かないしね」


ボンゴレが黒の組織に気をかけることになった要因の一つがファミリーの一員である桜井優が大和大輝という友人から相談を受けたことだと聞いている。

大和大輝は大和コーポレーションという会社の社長をする傍ら会社の金を黒の組織に回しその上そのメンバーとして動いていたというが、罪悪感を覚えたそうだ。

長年そんなことをしておいて何がいきなり罪悪感を覚えさせたかとか、よりにもよってどうしてボンゴレに所属する桜井に話を持ちかけたかなんて少しも興味がない。

だが、それがきっかけとなって大和大輝は黒の組織の情報を盗み出し、それを綱吉が回収した。

敢えてボンゴレボスが例え裏切り者だろうとその組員に接触したという事実に、敵はどう動くかが問題だ。

結果として、その日の内に大和大輝は別の組員に裏切り者として殺され、殺した加井修介という人物もまた警察に捕まった後何者かに殺害されたとか。

一見無防備にパーティー会場を彷徨いた綱吉は協力者として大和大輝を保護するとも申し出ただろうが断られしかもその日に死んでしまった。

綱吉が気にしないはずがなかった。


「まあいいや。襲撃するのはいつ?」

「え、そんなのまだまだ先ですよ」

「何言ってるの?」


咬み殺せればいいかと思い訊けばとまだだと言われた。

その大和大輝から手に入れた情報を自分はまだ見ていないがある程度敵のアジトも人員も絞れたはずと雲雀は考えてた。

何を躊躇する必要があるというのだろうか。


「前に言いませんでしたっけ。あそこは守秘義務が高すぎるって」

「そう。面倒だね」


綱吉の名も知らない程度の雑魚の癖に随分ややこしいことをしてくれる。

殺気を放つがこのくらいで今更綱吉に怯えられたりはしない。


「僕のとこも動かす。それから──」


素早くトンファーを手に持ち綱吉に向かって振るう。

サッと避けた彼を睨んで二言。


「──咬み殺す。トレーニングルームに来なよ」


否という返事はなかった。




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