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今朝方なんとフクロウが運んで来てポイ捨てしていった手紙を凝視する。
何度見ても文面は変わらない。
ホグワーツ魔法魔術学校
校長 アルバス・ダンブルドア
マーリン勲章、勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会員
親愛なるポッター殿
この度ホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます。
教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。
新学期は九月一日に始まります。
七月三十一日必着でふくろう便にてのお返事をお待ちしております。
敬具
副校長ミネルバ・マクゴナガル
その手紙を見て、ここに来て以来ずっと忘れていた──馬鹿馬鹿しくて考えもしなかった──ことを頭に思い浮かべた。
とある児童書の存在だ。『ハリー・ポッターシリーズ』。
全七巻十一冊構成のローリング女史著書の超大作であるその物語を、私はこの世界に跳ばされて来る前に読んだことがある。
確か、面白い上に主人公と名字が同じだし読んでみろとファミリーの誰かに勧められたのがきっかけだった。
そして、その物語に出てきた主人公が通う魔法学校こそが今私の手元にある案内の手紙の送り主と同じ名称だ。
校長の名も同じで代筆者の名もその学校の教師の一人と同じだと記憶している。
ついでにこの世界に来た最初に出会った人物の名もその物語の登場人物の一人と同じだ。
偶然ですますには一致しすぎていると思った。
まさか私は物語の中の世界に入り込んでしまったのだろうか?
この疑問が一番今の自分の状況を的確に示しているようで怖い。
第一にここはイタリアであってホグワーツの存在するイギリスではなく、私は異邦者だ。
どうしてこんな物が届く?
何も魔法学校はホグワーツだけではない。
フランスやブルガリアにも有名なものがあると書いてあったのに、何故?
その疑問は多くの衝撃と共に数日後に明かされた。
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