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銃声の音がする。
何でこんなことになってしまったんだろう?
手招きしてくれる謎のスーツ姿の男に続いて俺達は走った。
ことの発端は友人と三人でイタリアに来てしまったことだと俺は、結城健は考える。
一緒にイタリアまで来たのは友人の清水大輝と小柳琢磨でバイトして貯めた金での旅行だ。
男三人なんて悲しすぎるとか、一旦わすれよう。
とにかく飛行機乗って、イタリア着いて、ガイドブック見ながらいろいろ回ったその5日目が今日だ。
流石に5日ともなれば多少の度胸はついていた。
それで、裏道を通ろうだなんて馬鹿言い出したの誰だっけ?
って俺なんだよ!今かなり反省している。何であんなこと言ったし!!しなきゃ良かった。
ただ、なんか裏町巡りって面白そーじゃんって思っただけなのに、何故こーなる?
始めは皆、探検気分だった。
そして最初に不味いと思ったのは道が分からなくなった時だ。
けれど立ち止まるわけにも行かなくて歩き続けて余計に深みに嵌まった。
一発の銃声が最初に聞こえたのはそんな時だった。
「ちょ、おい、今のってさ」
「いや、まさか…だろう……?」
「案外マジもんのマフィアとかじゃね?」
「待て待て、そんなん冗談じゃねーぞ!」
三人して立ち止まり、顔を見合わせた。
小柳が言い出したことはきっと、すぐに否定したくなったけれど俺や清水も考えたことだ。
え?何これ巻き込まれフラグ?嫌だ。
「とにかく逃げないと」
「でも、どこ行くんだ?」
そーだったっ!迷子じゃん俺ら。
仕方なしに音の聞こえたのと反対側へ行こうと提案しようとして別の声に遮られた。
聞いたことあるような、聞いたことないような、そんな声。
少し切羽詰まったような声。
ただし、イタリア語なんて辞書片手に挨拶しか出来ない俺らには全く理解出来ない。
返事をしないというか出来ない内に声をかけてきたんだと思う男が路地から現れた。
重力に逆らう金に近い茶髪に茶色っぽい色の瞳、それから真っ黒のスーツを着ている俺らと対して年齢が違わなそうな男の俺から見てもカッコイイ羨ましい男だった。
そしてやっぱりまた懐かしいような気がして頭を捻る。
こんな人に会ったら忘れそうにないのに。
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