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勿論暗殺者としてあからさまな動揺を表情に見せたりなんてしてないが、標的がニヤリと笑った。
今度は驚愕の声が、先ほどリョーマを呼んだ彼と彼の周りの人から上がる。
「どういうつもり?」
行動に移るのが本の少し遅かった。
知り合いが、桃城武が人質にとられてしまった。
他にこの場にいる一般人は青春学園のテニス部レギュラー陣。
見なかったのではなく、見たくなかった、気がつきたくなかった。
自嘲の笑みは心の中だけで浮かべる。
いつの間にやら随分と彼らに肩入れしていたらしい。
暗殺者だと、知られたくなかっただなんて。
「動くな!」
勝ち誇ったようにいい放つ標的に嫌気がさす。
人質にされてしまった桃城の手から落ちたボールに、一人輪から外れていた理由に気づいた。
敢えて一歩だけ前に出る。
「動いたら何だってわけ?」
「コイツを殺す」
「ふーん。何も関係ない一般人を巻き込むの?いい度胸してんね」
「お前ら!」
側近の四人にリョーマを囲むよう指示し、それらは迷いなくリョーマに銃を向けた。
この距離ならそうは外さないだろう。
「でもさ、俺もそういうのあんまり興味ないんだよ」
「何を言っている?」
「だから──」
ダンッと駆け出す。
「殺したいなら殺せばいいよ」
この状況で、リョーマの知り合いと思われる人質をとっている状況でそれに構わず特攻するだなんて考えていなかったのか、人質として価値ないとでも言うような台詞を言ったことに驚いたのか。
とにもかくにもその間に距離を詰める。
後ろの四人はそのまま撃てばボスにも当たる可能性があるために撃てない。
標的は危険と判断したのか人質を手放し、その頭に向けていた銃身をリョーマに向け撃った。
「出来るものなら、ね」
そして、それをかわして下から上へと刀を叩き込み、下ろすように二打撃目を放つ。
「さっさとコイツラ片付けといて」
他の四人を倒した部下たちに命令してから、刀をボックスに仕舞う。
押されて倒れた桃城と、状況に付いていけずただ見てるしか出来なかった他のテニス部メンバーを一瞥して目を閉じた。
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