5
部屋に戻ってほっと一息をつく。
まさか、九代目までいるなんて思ってなかった。
その時に、ボスの証であるボンゴレリングをつけているのは確認した。
十代目が決まる頃には手放すのだろうけど、今は自身の指に嵌めているようだ。
さーて、これからどうするか考えようかと思ったところで声が聞こえた。
こちらに向かってきているようだ。
言葉はイタリア語で内容はボクについてだった。
可愛い娘に育ってて良かったとか、以前のように拒絶されなかっただとか、あと、しっかりした子だとか。
拒絶されなかったって、ボクは貴方たちの名前も継承も呼ばなかったのに?
なんて心の中で笑う。
「美優、ちょっといいか?」
家光が扉越しに声を掛けてくる。
「ん?なーにぃ」
いいよ、とも言っていないのに家光は入ってきた。
九代目も。
そして、絶句していた。
「どーかしたの?」
理由はたぶん、勉強道具かな?
まだ四歳にすらなっていない子供が高学生のを持っていて、開きっぱなしにしていたから書き込まれているのが見える。
「いや、お前もうこんなことまでやっているのか?」
「そんなにおどろくこと、かなぁ?たいしたことないよ。こんなの。ぜんぜん」
口を尖らせて、教材をしまう。
ていうか、奈々さんから聞いてなかったのだろうか?
「なぁ美優。奈々から聞いたんだが幼稚園行ってないんだってな」
なんて返事をすればいいのかわからなかったのか、家光は話を変えた。
というか、これが本題なのかもしれない。
「うん。いってないよ」
「何でだ?」
「なんでって、いきたくないからだよ」
「どうして行きたくないんだ?お父さんに教えてくれるか?」
ふむ。何て答えようか?
「ねぇ、ぎゃくにどうしてボクにようちえん、いってほしいの?」
ゆっくり言葉を吟味するかのように話す。
「それが『ふつう』だからかな?でも、ボクは『ふつう』じゃあないよ。さっき、ゼックされてたのがしょーこ、だよね。それとも『こどもらしく』すごしてほしいのかなぁ?うん、ボクにはむりだとおもうよ。おないどしのひとたちのシコウなんて、リカイできないし、しようともおもわないから」
第一、前世ではボク、確か18歳だったんだよ。
それは口には出せないけれど。
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