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仮定と事実についてくだらないぐらいに熟考していたときに不意にチャイムの音が聞こえてきた。
奈々さんと綱吉の言うとおりなら家光が帰ってきたのかもしれない。
今、奈々さんは今夜はご馳走よ、と言って買い物に出かけているからボクが出るしかないだろう。
帰りにツッ君の幼稚園寄ってくるわ、とも。
期待と不安とを入り混ぜて玄関へと向かい扉を開ける。
「だれ、ですかー?」
言いながら視線を上へと向けると予想通りに家光がいた。
もう一人、後ろにいるっぽいけど家光が邪魔で見えない。
ええっと、会うのは一年半ぶりで、確か前は物心ついてないはずの頃だったんだから、と心の中で確認する。
「ええっとぉ、どなたさま?」
業とらしくも首をかしげて聞いてみる。
すると、家光は少し悲しそうな顔を一瞬だけしてからにやけた笑顔を作って口を開いた。
「父さんだぞ〜。美優、久しぶりだな。元気だったか?父さんのこと覚えているか?」
「あ、うん。げんきだけど。んーとと、いわれてみればシャシンでみたことあるかおかも」
暗に覚えてないよと邪気の無さそうな声で言えば、今度は明らかにがっかりとした顔をする。
「ま、いーや。おかえりなさい、であってるんだよね」
笑顔で言うと今度はにやけた顔をした。
そういえば、前世での親方様は家族にスッゴい甘かったっけと思い出す。
どうでもいいのだけれど。
「うしろのひとは?」
ひょいと家光の後ろを覗きこんで驚いた。
たぶん、表情に表れてしまっていたとしても一瞬だっただろうけど。
九代目。
そこにはマフィアボンゴレの九代目ボスのはずの人がいた。
にこっと笑って「だれ?」と聞く。
頭の中での混乱なんて表には一切出さない。
少なくとも前世通りだったなら、家光は極力、ぎりぎりまで、どうしようもなくなるまでは家族にマフィアに関わらせたくないんじゃなかったっけ?
ああでもそういえば、なぜかツナにぃと九代目って面識ありだったんだっけ?
それでか。と納得する。
会社の上司とでも嘯くのだろうか。
「はじめまして。私はティモッテオだ」
「ボクはミユだよ。ともだち?」
家光さんを指差して聞く。
指差しも一応たった三歳の子供だから許されるだろう。
「父さんの会社の上司だ。あと、人を指差しちゃだめだ」
ありゃ。駄目だった。
というか、ボクの予想通り。
「え〜、いいじゃん。わかりやすいもん」
軽く頬を膨らましてみる。
「ま、いーや。おふたりさんともはいって、どーぞ」
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