不思議な世界ー東堂ー

キャラ崩壊してるかも、東堂編

授業中、ふと空を見上げると、渡り鳥が『く』の字になって飛んでいた。雲が動いている。ゆったりとした風に、押されて流れる雲の合間は青い空。ハッとするほどキレイな青だ。先生の声が遠い。閉じられた窓の向こう側から、色んな音が聞こえてくるような気がした。風の吹く音、鳥の鳴く声、虫の羽ばたき・・・・あぁ、なんだか目蓋が重いなぁ。

〈暗転〉

気がつくと、私は森のなかにいた。周りを鳥や鹿やリスなど、様々な動物たちに囲まれている。着ている服も制服ではなくドレスのようだった。それも、どこぞのネズミがメインであるアニメ会社の白雪姫の衣装に限りなく近い。

「お、お前たちは随分人懐っこいのだな…」

戸惑いはしたものの、自分になつく動物は可愛いもんで、次第にさわり心地のいい毛を撫でることに夢中になった。しかし、夢中になってしまったがために、背後から迫る影に気づかなかった。チャキっと音がして、振り返るとそこにいたのは…

「隼人?」

猟銃をこちらに向けて構える我が友、新開隼人だった。両手でバキュンポーズしているようでなんだか滑稽だな。

「あぁ"白雪姫"、これも"女王"の命令なんだ」
「"白雪姫"?"女王"?何を言っているのかね?」
「"女王"が、自分より美しい貴女を殺せと俺におっしゃった。逆らったら俺の家族が、うさ吉があの方の餌食に…悪く思わないでくれよ…」
「よくわからんが、うさ吉がピンチなのか?」
「なっ!自分が殺されるというこの状況下で俺の妻の心配を!?」
「妻!?うさ吉がお前の妻!?」
「くっ…やはり俺には容姿も心も美しい"白雪姫"を殺すことなど…できない!」
「お前どうした!?普段はそんなこと言ってくれぬではないか!」
「逃げるんだ、城から遠くへ!そしてどうか生き延びてほしい。なぁに、うさ吉のことは心配しなさんな。そこらの猪の心臓でも持って"女王"の元へ行けば、きっと大丈夫だから。さぁ!行くんだ"白雪姫"!」

どうにも芝居がかった普段とは大違いの隼人に背を押され、ひたすら森の奥へ向かった。どうにもおかしい…ここは異世界と言うやつなのであろうか?先刻の隼人の言動と、自分の格好から察するに、ここは白雪姫の世界ということか。

○不思議な世界

この私が白雪姫。と、いうことはだ。この先に小人の小屋があり、そこにかくまわれている間に女王に毒リンゴを食わされ、王子のキスで助かるわけだな。隼人の様に知り合いがキャスティングされているのだろうか。ならば王子は巻ちゃんがいいなー、などと思いながら先へ進むと、案の定、全然小さくないが小屋を見つけた。これが小人の小屋か?

トントン

「おーい、誰かおらんかね?」

トントン

「おーい!」

これは勝手に入るべきか?と手を止めて悩んでいると、戸が開いた。

「はーい?」
「葦木場、か?」

おや?ここは小人ではなく巨人の家なのか?

「こ、小人の家を探している」
「あー、ここですよ?」

ここ!?葦木場は小人なのか!?2メートル超えで小人!?

「そうか…その、今夜一晩、止めてほしいのだが」
「そーゆーの断れって、おこりんぼうのグランピーちゃんに言われてるんだけど…」
「グランピー?」

そう言えば小人にはそれぞれ性格があったな。

「葦木場、じゃなかった、お前はなんと言うのだね?」
「俺?俺はおとぼけのドーピー」
「そうか!ピッタリだな!」
「えぇ…俺におとぼけ要素なんてないよ」
「いや大有りだ!」

こうなっては他の性格に誰がいるか確認せんわけにはいかんな!なんとしても入る。

「さて、もう日も落ちて来たことだし、入れてくれ」
「だからダメだって」

そんな押し問答を繰り返していると、中から怒鳴り声が響いた。

「おいこらドーピー!早く追い返せよ!つか誰だよ!」

この声は黒田か?

「グランピーちゃん…そういえば貴女だれ?」
「今更か!ふふん!私は白雪姫だ!」

そう名乗ると、トタンにドタバタと大きな音がなって、葦木場を押し退けるように黒田がでてきた。

「ふむ、お前がグランピーか、ピッタリだな!」
「し、し、し」
「ん?」
「白雪姫様でしたか!こここれは大変ご無礼をいたしまして…どどどうぞ我が家でおくつろぎください!」
「い、いいのか?しかし顔が真っ赤だが、熱でも…」
「めめめ滅相もございませーん!」

普段の割りとクールな黒田とまたずいぶん違う感じだな。そのまま中に通されて、中で食事を作っていたらしい他の仲間を紹介された。泉田こと恥ずかしがりなバッシュフル、真波ことしあわせもののハッピー。七人の小人ではなく、四人の小人なのか…少ないな。どうやら泉田が小人のリーダーの、ようだ。とてもピッタリだ!しかし、レース中に上半身をはだけて筋肉の名を呼ぶような泉田が恥ずかしがりや、か?むしろただの恥ずかしいやつ、いやいや、それでも可愛い後輩なのだが…まぁ、自分の美しい筋肉を人に見せることは決して悪くないのだよ。

「白雪姫様、ちょうど先日、炭鉱で行方不明になった仲間のペットが空いていますのでそちらをお使いください!」
「つ、使いづらいな…」
「いま我々は、グランピー、ドーピー、ハッピー、そしてアンディ、フランク、ファビアンと僕の七人で暮らしています」
「筋肉が小人枠なのだな」
「え!?どうしてアンディたちが僕の筋肉だとわかったのです?」
「白雪姫さんえすぱーだ!」
「こらハッピー!白雪姫様だ、様をつけろ様を!」

そんなこんなでわいわいしていると朝が来たらしく、後輩もとい小人たちは仕事へ出かけていった。そう簡単に他人に家を預けるとは、彼らの未来が何となく心配だ。なにもすることがない。そうだ、外を少しみてまわろう!と、小屋の外へ出た瞬間、目の前に黒いフードの男がいた。

「誰だ?」
「リンゴは、いらんか?」
「は?」

ま、まさかこの男が女王だというのか?しかもこの声は…

「福、か?」
「リンゴは、いらんか?」
「い、いらん…」
「リンゴを、やろう」
「いらん」
「リンゴはうまいぞ」
「そうだな」
「俺はリンゴが好きだ」
「知っている」
「お前にリンゴをやろう」
「好きなら自分で食えばよかろう」
「お前に食べてほしい」
「毒が入っているやもしれんからいらん」
「俺は嘘が嫌いだ。だからあえて言おう。毒は入っているがこれはおいしいリンゴだ。うちの鏡に食わせたから保証する」
「…なおのこといらん、が、鏡に食わせた?まさか鏡とは荒北のことか?普通にあり得そうだぞ」

荒北は福に絶対服従だからな。しかし、荒北が福より俺を美しいと言うかと言えばたとえそれが事実でも、福が喜ぶことしか言わないはずである。そしたら白雪姫ははじまらないのだが…。この際それはおいておく。

「さぁ食え」
「これを食えば巻ちゃんが助けてくれるのだろうか…?」
「さぁ、リンゴを」
「物語も進まぬし、仕方なかろう。よし福よ、お前のリンゴを食ってやる!」

シャクッとリンゴをかじって、だんだんと意識が遠退いた…。

〈暗転〉

キーンコーンカーンコーン、耳にチャイムの音が響いてはっとした。キーンコーンカーンコーン、目に大量の光が入ってきてまぶしい。キーンコーンカーンコーン、パチパチと目蓋を動かす。キーンコーンカーンコーン。目がなれた頃にあたりを見回すと、ちょうど授業がおわったところのようだった。「起立」、号令係の号令で立つ、礼がおわり着席までの一連の動作をこなすと、田蕗先生は教室を出ていった。

「む?」

あぁそうか、夢を見ていたのか。私が白雪姫とは、ピッタリだが変な夢だった。目の前に影が落ちる。見上げるとそこには荒北がいた。

「珍しく熟睡してたじゃねーかヨ」
「タイミングが悪いな、本来なら私が次に見るのは王子の顔だったと言うのに…」
「アァ?寝ぼけてんのか?」
「結局、巻ちゃんが王子か確認出来ずじまいだ。そういえばお前もまだ出ていなかったな。鏡かどうか確認もしていないし、このままでは順番的にお前が王子と言うことになるのか?鳥肌が立つな」
「おい、戻ってこい」
「結局お前は、私の王子なのか?このスリーピングビューティー…いや、話は白雪姫と違うのだが、とにかく私が」

ベシッ!

うだうだとまだ、夢の中にいる心地で話していると、頭を叩かれた。

「いたいではないか!」
「っせ!福ちゃんと新開が屋上でまってんだよ。さっさと弁当もっていくゾ」
「む、そうか。ならば仕方あるまい。行くか」

鞄から水色の弁当袋を取り出して、荒北と屋上へ足を進めた。

おわり

このサイト取り扱いの全シリーズ、全贔屓キャラによる童話トリップ(?)シリーズ、東堂さん完成!
そしてハピバー!

2013,8月8日

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