朱い夕陽

政宗の口調が滅茶苦茶、政幸成立済み

○朱い夕陽

政宗視点

ドンッ

「っ!」
「あっ・・・・す、すみません!」
「幸村?」
「政宗様でしたか・・・・」

学校の廊下で幸村とぶつかった。うつ向いて歩いていたからなのか、全く気がつかなかった。

「お怪我は?」
「ない。幸村は大丈夫か?」
「はい・・・・すみません、政宗様が近くにいたなんて全く・・・・」
「それは、ワシの影が薄いと言いたいのか?」
「ちっ、違います!いつもでしたら、政宗様が背の高い方に埋もれていてもわかります!」
「おい、ワシがチビだといいたいのか?」
「いえ!政宗様が誰よりも目立つと・・・・」
「そんな目立つようなことをした覚えはないぞ」

幸村がおろおろとし始める。これが楽しくて仕方がない。

「そ、そうではなく・・・・えっと、兼続さん曰く、それは愛の力だと言われたことがあります」
「なっ・・・・!」

何だと!あのイカ男めっ。へ、へへ変なことを幸村に教えるではないわっ!幸村も言いながら、ほんのり頬を染めおって・・・・可愛いではないか。あ、いや違う!

「そ、そうか・・・・では今は、どうしてワシを見つけられなんだ?」
「下を向いていたからだと思います」
「下を?何か落ち込むことでもあったか?」

落ち込んでいるなら話くらい聞いてやろう。と続けると、幸村は首と両手を横に振った。

「いえいえ、落ち込んでなど!実は・・・・兄上が結婚するのです」
「信之が?では、まさか・・・・」
「はい、ついに義姉上にプロポーズをしたのです!」

嬉しくて嬉しくてにやける顔を隠すためにうつ向いていた、ということらしい。なるほどな。信之と徳川カンパニーの本多の娘には男女のつき合いがあった。その二人の結婚を今か今かと待ちわびていた幸村には、こぼれる笑みを抑えることができなかったのだろう。

「政宗様も何かあったのですか?」
「む?」
「政宗様はいつも、シャンッと前を向いて堂々と歩いておられます。ぶつかるほど近くに来た私に、気が付かないわけがありません」
「・・・・」
「何かあったのではありませんか?」

心配そうな顔で覗き込まれる。その顔はやめてくれ。ワシが貴様のその顔に弱いことなど知らぬくせに卑怯だ。この天然め。

「お節介でしたら申し訳ありません」
「いや・・・・ここでは話せぬ。屋上へ行くぞ」

どうせもう放課後なのだ。立ち入り禁止の屋上に入ったとしても、誰も困らぬ。それにしても、ワシも大概、幸村には弱くて敵わん。


「進路のことでな、決めかねておるのだ」
「進路?政宗様は、お父上の会社をお継ぎになるのだと思っておりましたが・・・・」

一陣の風が吹いた。

「もちろん将来的にはそのつもりじゃ」

だけど、高校を出て、更に大学を出た後に、ストレートで父の会社に入るべきではない気がしていた。

「ではどこか別のところへ?」
「そうじゃな。いっそ大学は海外にでも、と考えておる」
「海外に・・・・」
「会社のためになりそうなことを、片っ端から身に付けてきたいのじゃ」

しかし、大学に通いながら会社の様子を近くで見ていきたい。という想いもある。幸村とぶつかる前には、進路相談室で担任と、どうすればいいのか話し合っていた。担任は一生懸命考えてくれて、日本でも様々なことを学べる手段を見つけようとしてくれた。しかし、最終的に言われたのは・・・・

「海外と日本で同じことを学んでも、やはり違いはあるだろう。だから最後は結局どちらか選ぶしかないと・・・・」
「そうですか・・・・」

空が少し朱くなってきた。

「政宗様が海外にいってしまったら寂しいです」
「幸村・・・・」
「でも、こんなこと言うのは無責任かもしれませんけど、私は政宗様が政宗様らしくあれる方へ行ってほしい。本当は、もう答えは出ているのではありませんか?」
「・・・・」
「何か決めかねる原因が?」

幸村の方へ顔を向けると、ワシの方をじっと見てこたえを待っているようだった。決めかねる原因と言われて、頭に浮かんだのは母のこと。父がワシを跡継ぎにと決めてから、弟を連れて実家に帰っていた。先日一悶着あってからは家に戻ってきて、それなりに仲良くやっている。せっかく一緒に暮らすようになったのに、今度は自分から離れるのか・・・・心のなかでワシ自身がそう問いかけてくるのだ。

「・・・・そう、ですか」
「世界には出たい。だが、また離れるのは・・・・それに」

幸村、貴様のこともある。

「え?」
「貴様なら、何年でもワシを待っていてくれると思っておる。だが、いや、だからこそ心配なのじゃ」
「?」
「誰かが幸村をかっさらっては行かぬかと・・・・貴様の気持ちはずっとワシにあるだろうという自負はある。だが、貴様にどうしようもない形で、無理矢理意に沿わぬ結婚とかもあるじゃろう?」

沈黙。空の朱は先程よりも濃い。

「そうですね。政宗様がただ私を置いてきぼりにしてしまうだけなら、そういうこともあるかもしれません」
「・・・・」
「でも、私が政宗様と絶対に離れられない関係だったらどうでしょう?」
「絶対に離れられない関係じゃと?」
「えぇ」

にっこりと笑ったまま、幸村は何も言わなくなった。絶対に離れられない関係、手錠でもするのか?いや、そんなわけがないだろう・・・・絶対に離れられない関係・・・・あ。

「それは、ままままさか・・・・信之と同じことをワシにしろと言っておるのか?」
「政宗様がいやでなかったら」

空の果てが紫色に染まり始めた。

「い、嫌なことなどない」
「よかった・・・・」

ふんわりと笑う幸村の頬が、赤く染まっているのは夕陽のせいだろうか。

「お義母上のことも心配ありません。お手紙でも電話でも、テレビ電話でならお顔を見てお話しできます。できるのならば月一で日本に帰ってくればよろしいのです」

幸村がワシの手を取って引っ張った。

「さぁ帰りましょう。私にはこれ以上何も言うことはできません」
「礼を言う。だいぶ楽になった」
「ふふふ、どういたしまして」

もう空はだいぶ暗い。幸村を送っていこう、そう決めた。


おわり


尻切れトンボorz
そして政宗母との一悶着話はいずれ書きたいです。


2011.11/14

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