寿司ハント


○寿司ハント

回転寿司は一種のハンティングである。獲物は各種ネタ、武器は素手一本でぐるぐると回る獲物が、他の人に盗られてしまう前に素早くゲットしなければならない。人気のあるネタは直前のハンターも狙っている。焦るあまり、うっかり他人の前にまで手を伸ばして獲るのはタブーだが、全然来ないからと注文するのも、俺のプライドが許さない。いつもつるんでいる友人たちにそれを言ったら、兵助には呆れられ、三郎には鼻で笑われたが、八左ヱ門からはなんかわかると同意されたし、雷蔵はハンティングって考え方がカッコいいと言ってくれたから気にしない。注文なんぞ、確実に殺れるとわかっている雑魚モンスターを狩るようなものだ!否、狩りですらない!

なぜ俺がそんなことを力説しているのかと言うと、今現在回転寿司に来ているからである。まぁ、ただそれだけ。だいぶ空腹を満たして、そろそろおやつでも食べたいな、と回るネタを眺める。マグロ、サーモン、イカ、タマゴ、イクラの軍艦、ウニとキュウリの軍艦、かんぴょう巻き、エビなどスタンダードなものから、サーモン炙り焼き、マグロの賄い軍艦、イカオクラ、エビ天、エビフライ、カキフライなんて少し変わったものもあり、ハンバーグや鳥の唐揚げなどもはや海産物ですらないネタもあるが、どれも大好きだ。

「勘ちゃん」
「ん、何ハチ?」

右隣にいた八左ヱ門に肩をつつかれる。

「カリフォルニアロールって逆輸入されてるよな」

目の前のメニュー表を指差してそう言った。八左ヱ門の更に右隣にいる三郎がそれを聞いて八左ヱ門をからかう。

「ハチ、逆輸入なんて言葉知ってるんだ」
「ちょ、ひどい」

俺もそれに便乗した。

「じゃあハチ、カリフォルニアがどこにあるかは知ってる?」
「バカにすんな!アメリカだろ?」
「アメリカのどこ?」
「どのあたりかはわかる?」
「え?アメリカの・・・・カリフォルニア州・・・・?」
「だーかーら、そのカリフォルニア州はどこかって話だよ〜」
「もしかしてハチわからないの?」
「ぐっ・・・・じゃ、じゃあアメリカの南の方?」
「「あはははははは!」」
「笑うな!」

すると俺の左隣で、注文した味噌汁と冷やっこを頬張っていた兵助が助け船を出す。

「ヒント、シエラネバダ山脈西側の太平洋に面したところなのだ」
「よけいわかんねぇよ!」
「ネバダって聞くとオカマの親子が出てくるね」

三郎の右隣にいる雷蔵も会話に参加。重なっている皿の数が三郎とぴったり一緒だ。大方、選んで決められない雷蔵の代わりに三郎が自分と同じネタを勧めたのだろう。

「あー懐かしい。美容室だよな」
「カリフォルニアの東かな。ネバダ州あるよ」
「じゃああの人たちそこから来たんだ」
「設定上はね」
「結構ヒント出ちゃったな。ハチ、これでもうわかるだろ」
「え・・・・わかんない」
「おま!いま何聞いてたんだ」
「ネバダ州が東にあるから・・・・ネバダ州の西側!」
「「まぁ・・・・うん」」
「なんだよその反応!?」

そんな話をしたから、頭の中に懐かしい美容室の歌が流れてきた。結構前のことなのによく覚えていたものだ。再び回るネタに目をやる。お、杏仁豆腐だ。締めにはちょうどいいさっぱり系。だが兵助に盗られてしまった。歪みねぇな。ちょっと悔しい。次に来るときは俺が兵助の左隣に座って、兵助の目の前で杏仁豆腐をハントしてやろう。

おわり

2012.6/21

[ 34/113 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -