けれど僕らは気付かない

転生現パロ、竹谷にょた、ごったけ?、明るくない話

3.けれど僕らは気付かない

side T

「はっちゃんさ、何か悩みごとでもある?」

部活終わりの帰り道、左側から兵助に問われた。少し前では勘右衛門と三郎がじゃれあっている。

「悩みなんてないさ」
「嘘、授業中もため息ついてたでしょ」

今度は右側から雷蔵に指摘される。

「ため息ついてた?」
「うん」
「よく見てんなぁ雷蔵」
「えっ、あ・・・・ちょうどハチが目に入りやすい席だからっ」
「気にかけてくれてありがとう」

明るさを意識して笑いかけると、一瞬眉をひそめたが、雷蔵は微笑み返してくれた。可愛いなぁ。その可愛さに、罪悪感で胸が痛んだ。兵助が“悩みごと”について詳しく聞こうとしてるのだろうか、口を開く。けれどオレは、兵助が言葉を発する前に話題を替えた。“悩みごと”の有無を、うやむやにしてしまいたいのだ。

「はっちゃん・・・・」
「兵助と勘ちゃん、あっさり仲直りしてよかったよ」
「え?」
「何かよくわからないけど、オレに不満があって、それを言うか言わないかで揉めてたんだろ?」
「違う!」
「違うのか?まぁともかく、オレが原因で二人がケンカするなんて嫌だからな」
「っ!」
「ハチ・・・・」
「オレにダメなところがあったら遠慮せずに言えよ。直せたら直す」

兵助と雷蔵が悲しそうな顔をした。それを見て見ぬフリして続ける。

「前世からの仲だろ?」

暗に、この関係を変えたくないのだと示唆しているのだが、彼らは気が付いただろうか。

オレの“悩みごと”は、みんなの気持ちを知ってしまったことだ。気付いたと言う言葉が正しいかもしれない。みんなと再開してから、前世の夢を観るようになった。夢として過去を観ると、自然と客観的になる。当時わからなかったことが、わかるようになったのだ。やたらと手を繋ぎたがる勘右衛門、話をしながらオレの反応を見る雷蔵、子供みたいな嫌がらせをする三郎、豆腐を食べさせようとする兵助。改めてよくみると、みんな頬を染めている。がさつな男だった当時の自分では気がつけなかった変化だが、女の身となり、色恋に敏感になった今、それが何を意味しているのか気づいてしまったのである。お互いに遠慮して少しギクシャクしていたことも、そして現代も、みんなの気持ちが変わっていないことも・・・・

好かれることは正直嬉しい。オレだっていまは女で、周りにカッコいいのが四人もいればトキメクこともある。だけどダメだ。この四人の誰かと恋愛はできない。前世からの大切な仲間、唯一の親友たちなのだ。四人には申し訳ないけれど、オレはこのままでいたい。だから、

「みんな仲良くが、一番だ」

オレは気付かないフリをする。


2012.4/5


【そんな僕らが世界の中心!5題】より
お題配布元→空を飛ぶ5つの方法

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