そして僕らは傷付け合う

転生現パロ、竹谷にょた、ごったけ

2.そして僕らは傷付け合う

side R

入学式から早くも数ヶ月が過ぎた。みんなと再会してからよく夢に見るようになったのは、遠い昔の記憶。僕らが今の僕らでは無かった時の光景だ。笑ったり泣いたり怒ったり、忍者を目指して切磋琢磨したあの頃みたいに、今またこの五人で一緒にいられる。

「時代が変わっても僕らは変わらないね」
「そうだな」
「ハチは明るく元気だし、勘ちゃんは面白いし、兵助は」
「豆腐小僧だし?」
「え?違う違う。いや、違わないのか・・・・?」
「雷蔵の迷い癖も健在だしな」
「三郎は相変わらずいじわるだ」
「膨れっ面も可愛いぞ」

昼休み、隣のクラスの前で三郎と待ちぼうけをしている。ハチが兵助と勘ちゃんを呼びに中へ入ってから5分は経ったんじゃなかろうか。なかなか出てこない。これから五人で食堂に行く約束をしているのだが。

「遅ぇな」
「うん、来ないね」

しばらくして、ようやくハチが出てきた。眉を寄せて少し困り顔だ。

「兵助たちは?」
「・・・・ケンカしてる」
「ケンカだと?」

原因はほんの些細なことのようだけど、それがトリガーを引いてしまい、今までお互いに抱えていた不満が両者ともに爆発したらしい。

「珍しいな」
「ど、どうする?」
「ほっときゃ勝手に仲直りするだろ」
「でも・・・・」
「勘ちゃんが言うには、兵助がオレに言いたいことがあるのに全然言おうとしないから腹がたつんだって」
「・・・・」
「・・・・」

思わず三郎と顔を見合わせる。

「で、兵助はそれは勘ちゃんも一緒だろうって言ってる」
「・・・・」
「・・・・」
「オレ何かしたかなぁ」

side S

あぁくだらない。つまり、二人揃ってハチのことが好きで、それをわかっているから告白なんかできない。だけど相手が先に告白してくれたら、それで自分は諦められるのだと言いたいのだろう。全く同じことを俺と雷蔵も遥か昔にやっている。

「う〜ん、耳が痛い」
「大丈夫か雷蔵?保健室行く?」
「いや、大丈夫」
「仕方ねぇな。おい、お前らは先に食堂行って席取ってろ。兵助たちは俺がなんとかする」
「え?」

なんとかってなんだよー?と言うハチの声を背中で聞きながら教室へ入る。前後の席で睨みあってる二人を発見。双方の後頭部を掴み、額同士をガンッとぶつけた。

「「って!」」
「バーカ」

額に手をあて、うつむき悶絶する彼らを見下ろす。

「お前らの気持ちは、俺と雷蔵も痛いほどよくわかる」
「三郎・・・・」
「だけどな、それでハチにあんな顔させてたら元も子もないだろ」

それは承知していたのだろう。二人は気まずそうに目をそらした。

「とりあえず、ハチと雷蔵が待ってる。食堂に行こう」

促すと、しぶしぶ立ち上がった。あぁ、雷蔵の言う通り何も変わっていない。みんながみんな、自分以外の四人が大切でしかたがないのだ。だからこうしてケンカもするし、気まずくもなるんだ。でもお互いを大事に想うからこそ、仲直りだってできる。同じ想いでいるからこそ、気持ちを分かち合える。気を使うのはやめにしようぜ。


もしハチが、俺たち以外に恋したら、その時は四人揃って大泣きしようじゃないか。

2012.4月4日

【そんな僕らが世界の中心!5題】より
お題配布元→空を飛ぶ5つの方法

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