ただの戯れ

勘竹

○ただの戯れ

八左ヱ門と喧嘩した。原因は本当に些細なことで、いつもならすぐに仲直りができるくらいどうでもいい理由だった。俺も怒ってはいたが、内心ではいつものじゃれあいと同じように思っていた。だけど、八左ヱ門はそうじゃなかったらしい。ここぞとばかりに俺への不満をぶちまけた。それに対して、俺もぶちギレた。生憎、その場には止めてくれる人がいなくて、だんだんエスカレートした言い合いの末、俺は八左ヱ門に言ってはいけないことを言ってしまう。

「お前なんか大っ嫌いだ!バーカ!このドブス!」

まるで小学生の悪口である。いま思うと、何てことを言ってしまったんだろうと、後悔で胸がいっぱいだ。ドブスなんて・・・・八左ヱ門が自分の容姿にコンプレックスを持っているとわかっていたのに。バカは俺の方である。この後、八左ヱ門は目頭に涙をためて、その場から走り去った。あーあ、今日はせっかく久しぶりに放課後デートをする予定だったのに、八左ヱ門も楽しみにしていたのに。どうしてあそこで引いてやれなかったんだろう。きっと傷付けた。すぐに八左ヱ門の背を追いかけられなかった俺は、今さらになってやっと彼女を捜している。

「電話も出ないし、メールの返信もない」

あの一言のせいで八左ヱ門が思い詰めていたらどうしよう。嫌われていたらどうしよう。このまま別れることになったらどうしよう。次々と溢れ出す不安を誤魔化すようにため息を吐く。そうだ、俺は八左ヱ門が好きだ。大嫌いなんて嘘っぱち、ドブスなんて本当は思ってない。早く、早く見つけて謝りたい。けれど、その想いとは裏腹に、八左ヱ門は見つからなかった。最後に、喧嘩をした場所へ戻ると、そこに人影があった。

「ハチ?」
「っ!あ、勘ちゃん・・・・」

八左ヱ門がいた。やっと見つけた。

「ハチ!」

目を赤く張らした彼女に抱きつく。腕の中で一瞬強張ったが、そっと抱き締め返してくれた。

「ハチ、ごめんね。嘘だよ。大嫌いもバカもドブスも嘘!優しくて、泣き虫で、可愛いハチが大好き。ごめんね、本当にごめんね・・・・っ」
「今は勘ちゃんの方が泣き虫じゃん。こっちこそ、酷いこといっぱい言ってごめん。八つ当たりだったんだ」
「八つ当たり?」

それは、俺への不満をぶちまけたことだろうか。

「昼休みにさ、勘ちゃん告白されてたでしょ」
「あー、うん」

確かに、女の子に手紙で呼び出された。

「それ見ちゃって」
「で、でも断ったよ!俺にはハチだけだもん」
「ん、それも聞いてた」
「じゃあ何で?」
「相手の子、いっこ下の後輩だろ。めちゃくちゃ可愛かったから・・・・自分はあんなに可愛くなれないなって思って」

俺はそんなことを考えていた八左ヱ門にドブスって言ったのか・・・・。劣等感を刺激した。いったいどれほどその言葉が胸に突き刺さったのだろう。傷付けて泣かせて、彼女の気持ちもさっすることもできなくて、ああ、なんて情けない。

「ハチ、みっともないけど言い訳をさせてください」
「え?」
「さっき言ったことは全部売り言葉に買い言葉っていうか、多少ホントに思ってたこともあるけど、大嫌いとドブスは絶対違うよ。確かにあの後輩ちゃんも可愛かったけど、俺にとってはハチがこの世界一番可愛くてキレイな女の子だ。誰よりも愛しい」
「っ・・・・」

八左ヱ門は耳まで真っ赤になった。

「あ、さっき言われたことはなるべく直すから!」
「いや勘ちゃん!あれはただの八つ当たりでっ、あれは、あんまり気にしないでくれ。その、俺こそごめ・・・・」
「待った!もうごめんは無し」
「うん」
「じゃあ、仲直りってことでいいかな?」
「わかった」

少し体を離して、八左ヱ門の頬に手を添える。目を附せ、ゆっくり顔を近付けて・・・

おわり

たまにはまともなCPモノを書こうとした結果がこれですorz
書き慣れてないのがバレバレですね(苦笑)


2012.5/10

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