フェティシズム

竹谷にょた注意、学パロ

○フェティシズム

三郎視点

「谷崎潤一郎は女性の足に対して異様な執着があった」

放課後、いつものように教室でダベっていると、兵助がそんなことを言い出した。

「彼の著作を読むとよくわかる」
「突然どうしたの?」
「タニザキさんって誰?」

両脇にいた勘右衛門とハチが彼に問いかけた。二人ともきょとんとしている。そりゃそうだ。何せ直前まで俺たちが話していた内容は、もうすぐハロウィンであることとか、文化祭にクラスや部活、委員会で何をやるかとか、どのアイドルのどの歌が好きだとか、谷崎潤一郎という作家とは何の関係もないただの雑談だったのである。そんな中、突然「谷崎潤一郎は足フェチだ」なんて話を出すなんて、兵助は変わり者だ。

「兵助は、谷崎潤一郎のファンなの?」

雷蔵はそう聞きながら、兵助が何を言いたいのかを理解しようと頭を悩ませている様子だ。

「いや、別にファンではないが、三郎やタカ丸さんと似ていると思ったんだ」
「はぁ?」

別に俺は女の足に執着なんてしてないし、タカ丸さんだってそうじゃないだろう。いよいよもって兵助がわからなくなってきた。

「ねぇ、だからタニザキさんって誰?」

俺や雷蔵、勘右衛門が困惑するなか、ハチは唯一人会話についていけないようである。谷崎潤一郎を知らないのか。

「えっと、なんて説明したらいいのかな。あーでもないこーでもない・・・・」
「女性の足が大好きな小説家だよ」

いい説明の仕方が思い付かない雷蔵。勘右衛門はあっさりとハチに言ったが、それじゃあ谷崎潤一郎がただの変態になってしまう。いや、変態には違いないのかもしれないが、それなりに凄い作家なんだぞ。

「ふ〜ん、三郎は女の子の足好きなのか?」
「そんなわけないだろう」
「でも夏休みにみんなでプール行ったとき、ハチの足について語ってたよね」
「それを言うなら勘右衛門、お前もだろう」
「・・・・ちょっと、詳しく話してもらおうか」

しまった。余計なことを言ったか。

「あ・・・・いや、ハチの足はキレイだねって話してただけだよ!ほ、本当だよ!」
「特別足が好きなわけではない」
「へーんーたーいー」
「うわぁごめんよハチ!別にイヤらしい目で見てたわけじゃないから!」
「お前のようなちんちくりんの足なんかで欲情しない」
「三郎!」

横にいた雷蔵にたしなめられた。さすがにひどいことを言ってしまっただろうか。

「いや、俺が言いたいのは三郎と勘ちゃんが、はっちゃんの足を舐めるように見ていたことじゃなくて・・・・」
「「見てない!」」
「三郎って他人の顔が好きだろう。タカ丸さんは髪の毛が好き」
「あ、顔フェチと髪フェチってこと?」
「雷蔵正解。フェティシズム思考があるだろう。それが似てると思ったんだ」
「ふぇ、ふぇてぃしずむしこお?」

あ、またハチわかってないな。そうだよな。お前、生き物にしか興味ないもんな。文学や思想なんかわからなくて当然だ。しかし・・・・

「まるで俺が人の顔しか見てないみたいな言い方をするな」
「「「「え、違うの?」」」」
「・・・・」

四人で声を揃えて言わなくたっていいじゃないか。まったく心外だ。俺が顔だけで人を選んでいたら、お前らは友達じゃなかったかもしれないだろう。もちろん、雷蔵の優しげな顔は好きだし、ハチは可愛い顔をしているし、兵助はイケメンだし、勘右衛門の親しみやすい顔はまさに俺好みだが・・・・アレ?

「いや、たまたま友達になったお前らの顔が俺好みだったんだ。顔で選んだわけじゃない」

・・・・はずだ。

「えー」
「三郎、君ってやつは」
「結局顔か」
「だから違うって!」

いま初めてみんなの顔について考えたくらいだ。だいたい、大切な友人を顔で選ぶわけがないだろう!そう必死に弁明していると、勘右衛門が笑い出した。

「ハハハハ!それはきっと好きになった人が好みのタイプっていうのと同じだよ」

三郎が俺たちのことを好き過ぎて、顔まで大好きになっちゃったんだね。ニヘラと笑ってそう続けた。

「な、何を!」
「なるほどな」
「それすごい納得」
「三郎、僕たちも三郎のこと大好きだよ」

ニヤニヤと笑いながら囲まれる。あぁ顔が熱い。やめろいたたまれない。いたたまれないが、少し心がほわんとした。

そうだよ、お前らの全てが大好きだよっ!


おわり


2011.10/23

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