友人を拾いました

連載にしようとしたけど失敗したブツB
現パロかつ竹谷と綾部が親戚のため注意、勘竹


○友人を拾いました


孫兵の進路問題を解決するために伊賀崎家を訪ねたら、何だか話がおかしくなって孫兵まで我が家で暮らすことになった。あのあと、夕飯をごちそうになっている間に帰ってきた父親は、それはいいと嬉しそうに手を叩いた。孫兵があんなになるまで反対していたご両親も、認めるとなったら手のひらを返したように一人息子に甘くなったもんで、親バカってこんな感じなのかと感心していた。そんなこんなで、その二日後から、お坊っちゃんだった孫兵もボロアパート暮らしだ。ご両親は息子がお世話になるからと、金の援助を申し出てくれたが、孫兵が自分でアルバイトをして払うと言い出した。たくましくなったもんだなぁ。

『牛乳は十勝産でいいですか?』
「あぁ、それで頼む。ありがとう孫兵」
『いえ、これくらいお安いご用です』

ピッと電話を切る。三人暮らしになって早一月、喜八郎と孫兵が手伝ってくれるので、色々楽になった。更に、作った飯を美味しそうに食べてくれる人がいるというのはいい。お陰で料理のレパートリーは二ヶ月前の倍になっている。一緒に昼飯食ってる友人たちは、最近弁当のおかずがこっているとちょっかいかけてくるくらいだ。料理下手な彼女でも出来たのかとつつかれたこともある。喜八郎と帰宅すると、アパートの前でお使い帰りの孫兵とばったり遭遇した。入り口の郵便受けには、また怪しい勧誘チラシが一枚。これもいい加減しつこいよなぁ、とか言いながら階段を上って二度目のデジャブ。部屋の前に誰かいる。行き倒れてはいない。しゃがみこんでもいない。ドアに寄りかかって、棒付きキャンディーをくわえていた。ていうかあの特徴的な髪の毛は・・・・!

「勘ちゃん!」

大学の友人、尾浜勘右衛門だった。俺たちに気付いた勘右衛門は、やぁと片手を上げて挨拶してから、泊めてくれと宣った。


「お前いきなりどうしたんだよ?ていうか三限サボったろ!」
「ははは、彼女に呼び出されてフラれてました〜」
「はぁ?」

家に入れて麦茶を出す。夕飯の準備をしなければならなかったが、勘右衛門に話を聞いてくれと引き留められた。喜八郎たちは部屋の隅っこに大人しく座って、こちらをうかがっている。

「でさ、傷心でぼろぼろだからハチに慰めてもらおうと思って来ちゃった」
「来ちゃった、じゃねーよバカ!」

この勘右衛門、顔よし頭よし性格も優しくて女の子に結構モテるくせに何故か長続きしない。

「で?今回は何でフラれたんだよ?」
「う〜ん、多分だけど、昨日つまみ食いしたハチのお弁当が、今まで食べた中で一番おいしかったって言ったからかな?」
「多分じゃなくて絶対それだよ」

彼女がせっかく作ってくれた勘右衛門への愛溢れる弁当と、ちゃちゃっと夕飯の残りを詰めただけの友人の弁当を比べて、友人の方がいいなんていったらそりゃあ彼女は傷つくだろうな。自業自得だ。この天然ボケ。

「えっと、ところで彼らは?ハチの弟さん?」
「従弟と後輩」
「へ〜、一緒に住んでるのは彼女じゃなくて年下の男の子たちだったのか」
「彼女いないって言ったろーが」

夕飯作るから適当にしてろ。と言って俺は今度こそ席を立った。食糧は幸い充分あるから、勘右衛門が急に泊ることになっても大丈夫なのだが、問題は布団である。三つしかない。しかも我が家にはソファーもない。座布団もそんなにない。まぁいっか。冷蔵庫には昨日作ったカボチャの煮つけと、おばさん(喜八郎のお母さん)が送ってくれた梅干しがある。白米炊いて、あとはほうれん草のお浸しとわかめの味噌汁、それから冷凍庫に入ってる魚を焼くか。

「おーい喜八郎。飯炊いてくれー」
「はーい」
「先輩、僕も何か手伝いたいです」
「あ、じゃあ俺も俺も」
「そうかー、じゃあ孫兵は冷蔵庫の中のカボチャを何か器によそってくれ。勘ちゃんは・・・・お浸し作れる?」
「ほうれん草の?」
「おう」
「おっけーまかせて!」

勘右衛門がいい戦力になって、思ったよりも早く夕飯が作り終わった。喜八郎と孫兵は器用そうなのに料理はてんでダメだ。包丁を持たせてはいけないタイプである。少しでも慣れさせるためにやらせた方がいいのかもしれないが、危なっかしくて見ていられない。

「勘ちゃんもいっそここに住む?」

料理できる人がもう一人いたら楽になるかもなんて思っていたら、つい口をついて出た。魚を突っついていた勘右衛門はびっくりしたのか、何故か頬を染めて口をパクパクさせていた。お前が魚になってるぞって言ってやろうか。声を出せずにいる勘右衛門に変わって、喜八郎が賛成する。一緒に夕飯の仕度をしているうちに、随分となついたもんだ。最近の喜八郎は人見知りが嘘のようである。

「尾浜さん、ちょうどお父さん役が欲しかったんです。ぜひそうしてください」
「何だよお父さん役って?」
「兄ぃがお母さんポジションでしょう。僕がお兄さんで孫が弟役」
「初めて聞いたぞ」

どうやら喜八郎の中では、そういう家族設定ができていたらしい。喜八郎になついている孫兵も隣で頷いている。仲良しだな。というかこいつらは家族ごっこがしたいんじゃないか。

「お、俺がお父さんと言うことは、ハチと夫婦・・・・!?」
「どっちも男だけどな」
「ハチ、こんな俺と結婚してくれるの!?」
「いやまてなぜそうなる」

前々からふざけて俺を口説くことはあったが、今日はいつもより興奮している。テンション高ぇや。我が家はそんなに広くないから、四人が限界だろう。

「三人目は生まないぞ」

勘右衛門のテンションに合わせてそう言ったら、鼻血を噴いて倒れた。何で!?

おわり

健全にするつもりが勘竹になってしまった・・・・!!
兵助でもよかったかな。

2012.4/22

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