えっすおーえすっ♪

乳揉み、鉢屋と竹谷

○えっすおーえすっ♪

柔らかくも弾力のある二つの山、もといこいつの場合は小玉スイカを、下から持ち上げるように揉む。男に後ろからそんな破廉恥なことをされているにもかかわらず、この女はそれを気にもとめることなく、携帯ゲーム機の中でモンスターを狩っていた。ジン様と呼ばれるそのモンスターは雷を身に纏っていて、関係ないけど雷蔵のことを思い出した。

「雷蔵に会いたくなった」
「呼べば?」
「ノルマを達成したらな」
「あーはいはい」

俺たち四人には乳揉み当番というのがある。やらしい響きだが、これは幼少の砌より決められたものだ。全く女らしさの欠片もないこの女を、少しでも可愛らしくしてやろうという俺たちの友情が決めたもので、決していやらしい意図はなかった。そう、胸さえでかく育ってしまえば、俺たちの前で服を脱ぎ始めたりなどしなくなる。きっと恥じらいを持ってくれると信じて、女に触るのさえ躊躇するお年頃の俺たちは、間違っても俺たち以外の男の前で裸になることのないように頑張ったのだ。ちなみに順番に一日一人で、ノルマは10分間である。

「しかし、いくらなんでもでかすぎだろう」
「お前らのせいだろうが。お陰で走ったり跳んだりすると痛いんだからな」
「じゃあ跳ばなくていい」
「バレー部辞めろって言ってる?七松先輩に殺されるわ」
「あー、あの人はまさに乳牛だよな」
「せめて爆乳と言え」

時計を見るとまだ5分もたっていなかった。

「ていうかさ、俺の乳揉み当番とやらはいつまでやるつもり?」
「お前が誰か恋人を作るまで」
「恋人ねぇ」
「何?やめてほしいの?」
「んー、だってこんなに大きくなって、ちゃんとお前らの望み通り男の前で脱いだりしなくなったのに何でかなぁって」
「嘘つけ。この前兵助んちで暑いって下着一丁になって勝手に兵助のTシャツ着てたじゃないか」
「え?それもダメなのか?」
「・・・・お前」

つい一週間前のことだ。学校の登校日帰り、夏休みの宿題をするために兵助の家に寄った。こいつと兵助んちは隣同士で生まれたときからの付き合いらしく、勝手知ったる他人の家とばかりに兵助の豆腐Tシャツを引っ張り出して着たのである。その時の兵助は鼻血を堪えるのに必死だった。

「みんなの前ならいいかなって思ったんだけど・・・・」
「俺たちも男なんだけど」
「・・・・」
「男は狼なのよ気をつけなさい♪年頃になったら慎みなさい♪」
「羊の顔していても心の中は♪」
「「狼が牙を剥くそういうものよ♪」」
「俺たちだけは大丈夫だなんてうっかり信じたら♪」
「ダメなの?」
「ダメだよ」

幼い頃から一緒にいすぎて、男として見てもらえていないのだろうか。全く失礼なやつだ。無防備なお前を守るために俺たちが色々犠牲にしたのを知らないんだな。

「じゃあ一緒に旅行行くときどうするの?」
「お前だけ別部屋」
「つまんなーい」

つまんないと言われても俺たちの理性は鉄壁じゃないんで。

「でもさ、そういう風にたしなめてくれるんだから、やっぱり三郎たちは大丈夫だよ」
「だからぁ、俺たちだって色々我慢「それにみんなになら何されても構わない」
「え?」
「なんちゃって」

てへへっと照れたように笑う。くそ可愛いな!

「あ、三郎10分たった」
「・・・・あと5分」
「どうぞ」

ボサボサの髪に顔を埋めて嗅ぐといい匂いがした。兵助の知り合いであるプロが選んだシャンプーとリンスを、こいつはちゃんと使っているらしい。そう言えば前は黒い色気のないゴムで髪を結んでいたが、今日は青いリボンの飾りがついたゴムで縛っている。私服も最近スカートやワンピースが増えたし、もしかして・・・・

「お前、好きな人でもできた?」
「え?三郎も雷蔵も兵助も勘右衛門も大好きだよ?」
「そうじゃなくて、あ、いややっぱいい何も言うな」
「は?」

妙な勘ぐりはやめよう。

「ハチ、とりあえず雷蔵を呼んでくれ」
「あーうん、わかった」
「ついでに兵助と勘右衛門もな」
「ついでなんだ・・・・」

おわり

フォロワーさんとの会話で思い付いた話。
竹谷の胸はやつらが育てた!
ピンクレディの『SOS』参照。

2012.7/31

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