真夏のひとこま

久々→竹、双忍が双子


○真夏のひとこま


「あーつーいーあついあついあついあついあついあついあついあついぃぃいいいい!」
「あーもーうるせぇなぁぁあああ!」

文月も二十日を過ぎた頃、と言えば頭が良さそうに聞こえると言ったのは、いま目の前で三郎に叩かれているはっちゃんだっただろうか。とにかく七月二十日以降、我らが学舎の大川高校も夏休みに入り、特に理由もないけれど何となくいつもの五人は、はっちゃんの家に集まっていた。勘右衛門ははっちゃんのベッドに転がってポテトチップスをつまみ、雷蔵はベッドに寄りかかりながら本を読んでいる。三郎はいつもの定位置であるその隣で、雷蔵を団扇で扇いだり、小テーブルを挟んで向かい側のはっちゃんを叩いたりしていた。そのはっちゃんは、あついあついと言い始める直前まで、俺と『大豆戦士トウフマン』映画化についての議論を交わしていた。はっちゃんは女の子で有りながら、戦う男が活躍する特撮が大好きである。ただ最近はその内容よりも役者がイケメンだとか、○○ミュに出てた人がたくさん出てうれしいだとか、そんなことばかり言い始めるから、彼女に片想いをしている男としては複雑だ。

「だってあついんだもん!」
「じゃあクーラーつければいいだろうが!」
「我が家はいま、節電の夏だから死ぬまでつけちゃいけないの!」
「阿呆か!」
「ハチも三郎もうるさいんだけどー」

むくりと起き上がって勘右衛門が抗議する。

「だってあついし・・・・」
「そんなに暑いなら、アイスでも買いに行く?」
「アイス!」

勘右衛門の案を聞いて、はっちゃんは嬉しそうに手を叩いた。体内に冷たいものを入れて体温を下げる作戦は非常に有効である。それを読書をしながら聞いていた雷蔵が、あ、と声をあげた。

「僕プールに行きたいな」
「え?いまから?」
「流石にいまからじゃ無理だろう」
「じゃあ明日」
「明日は俺と雷蔵はデートの予定だ」
「映画観に行くだけでしょう」

胸を張って得意気に言うことか。お前と雷蔵は恋人どうしじゃなかろうに。血の繋がった双子の兄弟がどんだけ大好きで独占したいんだ。

「何見るの?」
「○ルト」
「いいなぁ、俺それ気になってたんだよね」
「じゃあ勘ちゃんも一緒にどう?」
「行く行く!」

三郎は雷蔵と二人きりの予定で色々と準備しているのだろうな。勘右衛門を雷蔵が誘ったことに、眉をひそめて声をあらげるが、その声に被せるようにしてはっちゃんも手をあげた。

「ダメに決まって「はいはいあたしも行きたいな」
「・・・・はっちゃんがいくなら俺も」
「五人で行く?いいよね三郎」
「・・・・雷蔵の仰せのままに」

結局明日もこのメンバーかとぼやきながら、三郎は何時にどこに集まるかとか、映画の後にゲーセンでも行くかとか、いそいそと新たな計画を練り始める。やはりお前も五人がいいんだろう。

「三郎、みんなでプリクラ撮ろう!」
「却下だ」
「ていうかプールは?」
「雷蔵、そんなにプール行きたい?」
「うん。だって暑いし」
「じゃあ、いつ行こうか?」
「来週は?」
「ハチ、水着ちゃんとある?」
「あるけど」
「なんだ。水着買いに行くのについてって、超きわどいの着せようと思ってたのに」
「ちんちくりんのハチにきわどい水着が着こなせるわけないだろう」
「おいこら勘ちゃんも三郎もそこに直れ。これでもDはあるんだよ!」
「まぁまぁはっちゃん、俺ははっちゃんどんな水着でも好きだよ」
「はいはいありがと天然タラシ」

天然じゃないんだけどな。本気で口説いたんだけどな。

「で、実際はどんな水着もってんの?」

立ち上がって勘右衛門がタンスに手をかける。

「あ、こら勘ちゃん漁るなやめろ!ちょっ、ダメ!そこは下着入れだから!」
「なおさら見なくちゃ!」
「あーけーるーなー!」

はっちゃんの下着が見たいような気も・・・・いやいやダメだ。首を振って邪念を祓う。

「兵助もハチの下着見たいよねー」
「・・・・いや、いい」
「今の間は何?」
「・・・・」

仕方ないさ。だって男だもの。と雷蔵がポツリと呟いた。

「もー、あたしの水着なんか去年も見てんじゃんか」
「あぁ、青いスカートのツーピース?」
「そうそれ」
「あのガキみたいなやつか」
「三郎、さっきからあたしに喧嘩売ってるでしょ」
「僕は可愛いから好きだよ」
「・・・・子供っぽくて可愛いってこと?」
「うん」
「・・・・」
「暑いねぇ」
「暑いなぁ」
「結局プールどうする?」
「ハチ、明日新しい水着買えば?そんで明後日プールいこうよ」
「市民プールは明後日は休みだぞ」
「マジかー」
「で、いつ行く?」

次々と話題がそれるから、なかなか決まりそうにない。

おわり

文章が変?それは夏だからさ。

2012.7/28

[ 54/113 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -