疑似家族と従兄さん


○疑似家族と従兄さん

こへ兄ちゃんから電話があった次の日。何時に来るのかもわからないまま、四人それぞれ学校へ行った。一応、早めに授業が終わる勘右衛門に、先に帰って我が家で待機していてもらうことになったが、それでも何だか嫌な予感がする。喜八郎とスーパーに寄って帰路につく。アパートの前で孫兵とばったり合流した。

「僕も何か持ちますよ」
「いや、そんな重いもんかってないし、大丈夫だ。あ、郵便受け見てくれ」
「はい」

孫兵の手元を覗くと、一枚だけ何か入っていたようだ。他の郵便は勘右衛門がとってくれたのだろう。

「それ何だ?」
「勧誘チラシみたいです」
「あぁ例の・・・・」
「しばらく来てなかったのにねぇ」

久しぶりに届いた怪しい団体の勧誘チラシだった。デザインが少し変わっている。トントンとコンクリートの階段を登り部屋の前につく。もうこへ兄ちゃんは来ているのだろうか。

「ただいまー」
「ただいまぁ」
「ただいまもどりました」

玄関には勘右衛門のくつと、それより少し大きな男物のくつがある。あぁ、来ていたのか。中から声がしてどたばたと二人分の足音が近づいてくる。

「「おっかえりー!」」

うわっ、もう打ち解けてる!

今日の夕飯はこへ兄ちゃんの好物を作る予定である。兄ちゃんはとにかく揚げ物と肉が大好きだ。だからトンカツ。トンカツ用に切られた肉二枚入りのパックを三つ。こへ兄ちゃんは大食いだから二枚くらいないと足りない。まずキャベツを千切りにして、ジャガイモと人参、胡瓜を茹でている間に卵と小麦粉とパン粉を用意する。茹で上がったらジャガイモを潰して、マヨネーズとまぜてポテトサラダの完成。今度は肉に衣をつけて油で上げる。キャベツを敷いた皿に載せて完成。隣の部屋から、すっかり仲良しになった兄ちゃんと勘右衛門、孫兵の笑い声が聞こえてくる。喜八郎はどうやら兄ちゃんの膝の上で寝ているらしい。ご飯をよそり、お盆に載せてトンカツを運ぶと歓声があがった。

「おぉ八左ヱ門!お前ホントに料理うまくなったんだなぁ!」
「味も最高ですよ、お義兄さん」
「お義兄さんって何だよ!?」
「マジか!早く食おう!」
「・・・・早く食いたかったら運ぶの手伝ってよ」
「おう!と言いたいところだが・・・・」

喜八郎が寝ていて動けん。って、飯なんだから起こしていいんだよ。全部運び終えて、飯を食べ始めると、こへ兄ちゃんは俺の飯を絶賛した。

「トンカツ最高だな!ポテトサラダのマヨ加減もいい!」
「うちの嫁すごいでしょう」
「すごいな!」

嫁発言を否定はしないが、もっと静かにご飯を食べられないのか。兄ちゃんはすっかり勘右衛門と孫兵とジュンコを気に入っていた。マムシの毒?なにそれおいしいの?状態でジュンコを撫で回すものだから気が気ではない。孫兵も寸分の躊躇なくジュンコを可愛がってくれる兄ちゃんに、すっかりなついていた。

「八左ヱ門」
「何?」
「いい旦那を見つけたな。子供たちにも恵まれて・・・・父さんうれしいぞ」
「・・・・は?」
「勘右衛門くん」
「はい、何でしょうかお義父さん」
「・・・・」
「うちの娘をよろしく頼む。天国で母さんも、君が八左ヱ門の旦那になってくれたことを、きっと喜んでいることだろう」
「お義父さん・・・・はい、必ず幸せにしてみせます!」

突然始まった寸劇に、喜八郎と孫兵は泣く振りをしながら、パパとかおじいちゃんとかいいながら二人に抱きついた。みんなノリノリである。

「あぁ、八左ヱ門も感動で目が潤んでいるな」
「ハチ、さあ俺の胸に飛び込んでおいで」
「いかねぇよ。いいから早く食ってよ。片付かないだろ」
「「主婦だなー」」

わっはっは、と兄ちゃんが豪快に笑うと、勘右衛門たちもそれを真似てわっはっはと笑う。それがおかしくて、俺もぷふっと吹き出した。

「なんかいいなぁ、こういう雰囲気。私もあいつと・・・・」
「こへ兄ぃ、どうしたの?」
「いや喜八郎、何でもない」
「うん、決めたぞ!」
「何を?」
「一ヶ月くらいここに居候する!」
「はぁ!?」

一瞬、物思いに耽ったと思ったら、兄ちゃんは突然そう宣言した。

「一ヶ月って何で!?家業は!?」
「だから一ヶ月だけ居候させてくれ。ちょっとスランプだったし、向こうで色々あったんだ」
「俺はお義兄さんが居候するのかまわないけど」
「僕とジュンコもです」
「いいよね?はち兄ぃ」
「・・・・っ、一ヶ月、だけだからな」

四人の視線に耐え兼ねて、OKを出してしまった。

つづく、かな?

そろそろ専用部屋作るかなぁ。
こへには一応恋人がいる設定ですが、相手は未定です。

2012.7/7

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