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コクーンのファルシには色々な種類のファルシが存在している。そのどれもが無くてはならない人々の生活の補助となっている。

人々はファルシなしでは生きていけないらしい。


らしいというのにはわけがある。
ウィッシュに五年ほど前の記憶が無い。

ポツンと一人佇んでいたのだ。

同じくらい年を重ねてきたライトニングよりも、ウィッシュの方がファルシのありがたみと言うものを感じていない。

一般常識は備わっていた、しかしファルシというものは知らなかった、戦い慣れていた、だから軍に入った。

対人であるPSICOMには志願せず、対モンスターを主流としていた警備軍に止まったのだ。

夢のような昇格話も、ウィッシュにとってみればそれは恐怖の話しでしかなかった。

警備軍だって対人するが、それはどれも強盗団などの取り締まりや麻薬所持犯の取り押さえ等だ。

しかしPSICOMはそんな簡単ではない。

あそこは下界の戦争のために日々訓練をさせられている。

そして時には暗殺部隊としても一役をかっているのだ。

それをしているのはPSICOMの精鋭部隊だけ。

階級を持つ彼らが化け物並みに強いと称されるのはそのためである。

自分はそこへ行かねばならないと、引き抜かれようとしたがすんでのところでウィッシュはロッシュをとめた。

正式に断っていたら懲役ものだったが。



ボーダム近くにあるエウリーデ峡谷。

そこにファルシ=クジャタはいる。エネルギー・プラントを制御していて、これもまた人々の生活を支えていた。

一種の社会化見学現場ともなっているこのプラントの警備は警備軍の管轄だ。

昨日そこで大きな事故があったらしい。

ウィッシュをはじめとする警備隊は昨日ガプラ樹林でお泊りだったためにその事故のことを知らない。

PSICOMの連中がこそこそと話しているのをたまたま、偶然聞いてしまったからである。と本人は言い切る。

ずかずかとなりやまぬ足音を気にせず長い廊下を歩いていくウィッシュ。彼の目的はただ一人だった。

プラント事故はPSICOMが対処していた。一体何があったのか。

余りにも情報が少なすぎたのだ。

故意に開示されない情報に、いつしか民衆は情報提供を求めて大規模な運動を起こしてしまうかもしれない。

それをあいつはどう捕らえているのか。


「ロッシュ!!」

「……ウィッシュ。」


ツカツカツカと見つけた背中に足早と近づいてその襟首に掴みかかる。

いきなり掴みかかったものだからロッシュは驚いてされるがままになっている。


「エウリーデ峡谷での管轄はPSICOMだったな。

   そこで一体何があった。なぜ聖府は情報を開示しない。何か知っていることがあるんなら教えてくれ。」


掴みかかる、というよりもこれは縋り付くといったほうが正しい表記かもしれない。

それはただの八つ当たりだった。

こんなこと、ロッシュに聞いたところでロッシュだってガプラ樹林にいたためすぐ情報が手に入ってくるわけでもあるまい。

それをこんな風に縋り付いて聞いてくるのは八つ当たり以外何物でもない。

そんなことはウィッシュが一番良くわかっていた。


「……ごめん、いきなり…。」

「……聖府は軍にも情報開示をしていない。…PSICOM以外にはな。」

「んな、……っ!」


襟首にあった手を逆に掴まれ、勢い良く横に薙ぎ払われる。

ダン、と背中に鈍痛を感じ、ウィッシュは廊下の壁に縫い付けられる。


「この件に関わること、一切を禁じる。」

「…っ、ロッシュっ。」


ロッシュの高い鼻がつん、とウィッシュの鼻に触れたかと思うと、近づいてきた細長い瞳から目が放せない。

その意志の強い光に、ウィッシュは完全に魅せれていた。


  あ、睫毛長いな


それは小さな現実逃避。

ウィッシュの切な気に細められた瞳から一筋の雫石が頬を伝う。











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